「夜は短し歩けよ乙女」人気小説アニメの裏側

作者から見たビジネスの功利と作品への葛藤

『夜は短し歩けよ乙女』(C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会
小説を原作としたアニメ作品が増えている。今年1月には池波正太郎の時代小説『鬼平犯科帳』が深夜アニメ『鬼平』として放送を開始し、主人公の鬼平が長身痩躯(そうく)のイケメンに生まれ変わった。2月にはコアなファンを持つ伊藤計劃(けいかく)のSF小説『虐殺器官』の劇場版アニメが公開されている。
週刊東洋経済が3月27日発売号(4月1日号)の特集「熱狂!アニメ経済圏」で追っているように、これまで文学作品は実写映画やドラマ化されることが王道で、アニメ化されるのはライトノベルが多かった。小説のアニメ化について、原作者はどう見ているのか。
4月7日に劇場公開される『夜は短し歩けよ乙女』の原作者・森見登美彦氏は、4作品がアニメ化されるという、まさにアニメに愛された小説家。4月9日からは『有頂天家族2』の放送が開始され、森見作品がアニメにされるのは4作目(2010年『四畳半神話大系』、2013年『有頂天家族』)となる。小説のアニメ化は本の売り上げアップにつながる一方、小説家にとっては葛藤もあるようだ。森見氏が明かす、複雑な胸のうちとは。

 

森見登美彦(もりみ とみひこ)/1979年奈良県生まれ。京都大学農学部大学院修士課程修了。2003年に『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞受賞など。他の著書に『きつねのはなし』『ペンギン・ハイウェイ』『夜行』など

――原作とアニメを見比べてギャップを感じますか。

僕がいちばん、違和感を覚えているかもしれません。よく原作とアニメの世界が一致しているかと聞かれますが、僕の小説は言葉を膨らませることで映像が浮かんでくるような書き方。言葉とは切っても切り離せないので、言葉のないアニメとイメージが一致することはありえません。

でも『四畳半神話大系』と『有頂天家族』もそうでしたが、見ているうちにだんだん慣れてきます。自分にとっての作品は小説で、アニメは監督の作品だから。

――『夜は短し歩けよ乙女』ではキャラクターや脚本もチェックした?

送られてくるので一応見ました。間違いや客観的に考えてみて問題があるようなら指摘しますが、自分の原作や意見と違うから何か言うことはありません。監督の解釈や作りたい映像、それらの思いが渾然一体となっているので、そこに口出しすることは基本的にはないのです。作中に出てくる「詭弁踊り」も実際に映像化されていましたし。

「多少は変なことになってもやむをえない」

週刊東洋経済3月27日発売号(4月1日号)の特集は『熱狂!アニメ経済圏』です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

――アニメ化に対する葛藤は?

今もあります。『夜は短し歩けよ乙女』は僕にとって”箱入り娘“だから、あまり誰かに渡したくありません。でも『四畳半神話大系』(2010年にテレビアニメ化)のチームが制作することであきらめがつきました。湯浅さん(湯浅政明監督)たちに好きにやってもらおうと。

結局はあきらめですよ。僕はそこらへんが大事で、別に作品が映像化されなくても構わない。どこの誰かわからない人に任せるのは嫌だから、その人の作品を見て、人柄なども見て、この人に任せておけば多少は変なことになってもやむをえないとあきらめがついたらお渡ししようと決めています。

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