映画「この世界の片隅に」配給会社のこだわり 株価は5割増の爆上げ、東京テアトルの貢献

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 絵を描くのが好きな主人公すず ©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

快進撃といえるだろう。12月3~4日の週末の国内映画興行収入ランキング(興行通信社調べ)によると、アニメ映画『この世界の片隅に』が第4位にランクインした。

ミニシアターを中心としたインディペンデント(独立系)作品ながら、11月12日の公開以降、SNSなどの口コミで「感動した」などの評判が拡散し、興行収入は4.5億円を突破(12月4日時点)。観客動員数は32万人を超えている(同日時点)。

すでにミニシアターでは立ち見が出る盛況ぶり。週末には複合型映画館(シネコン)でもチケットの売り切れが目立っている。上映館数も公開当初は63館だったが、すでに80館を超え、年明けに向けてさらに拡大する見通しだ。

株価が9年ぶりの高値に

映画は太平洋戦争前後、広島市から呉市に嫁いだ主人公の女性すずの物語。当時の町並みや暮らしの様子を丁寧に描き、観ていると戦時中の広島にタイムスリップしたような錯覚に陥る。

8月6日の原爆投下の日の様子も、現地の被害を生々しく描くのではなく、呉市からみた原爆の様子をリアルに描き切っている。映画プロデュース会社がネット上で資金を募る「クラウドファンディング」で制作資金の一部を集め、片渕須直監督が6年間かけて映画化した。執念の一作は見事に観客の心に響き、人気を広げている。

『この世界の片隅に』のヒットで、株価が大きく上昇した会社がある。配給会社であり、自社映画館で興行も手掛ける東京テアトルだ。同社にとって『この世界の片隅に』は70周年記念作品。そのヒットで株価は11月半ばの120円前後から11月末には一時200円超えと約9年ぶりの高値に上昇。その後も190円前後の高値を維持している。

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