映画「この世界の片隅に」製作プロセスの秘密

クラウドファンディングの「実態」

主役すずの声優、のん(能年玲奈)も好評だ©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

「この作品こそ、今年のベストワン!!」「すばらしい!! 感動の涙が止まらない!!」などなど、11月12日の公開以来、絶賛の声が相次いでいる片渕須直監督のアニメ映画『この世界の片隅に』。今年は『君の名は。』『聲の形』とアニメ映画の傑作が続き、両作品とも作品的成功のみならず興行的にも成功を収めている。

『君の名は。』とともに“3Kアニメ”と呼ばれる感動作

『君の名は。』はスタジオジブリ作品『千と千尋の神隠し』の興行収入304億円に続く、日本製アニメ映画史上第2位の200億円が確実視されており、『聲の形』も興収21億円を突破した。これら2本のヒット作とともに“3Kアニメ”と称される『この世界の片隅に』だが、こちらは大手映画会社が絡んでいないインディペンデント作品で、オープニングスクリーン数も64と先の2作とは比較にならない小規模のマーケットで公開された。だが『この世界の片隅に』は多くの観客から拍手と絶賛をもって迎えられており、その感動の波は、通常の映画興行の常識を打ち破る勢いを見せている。

この作品が世に出た背景に、ひとりのプロデューサーによる、挑戦と革新的な試みがあった。アニメ企画プロデュース会社GENCOの社長であり、同作品のプロデューサーを務めた真木太郎氏に、この映画の成り立ちについて語ってもらおう。

「2013年の1月ごろ、MAPPAの丸山さんから “こういう状況だから参加してほしい”と請われ、そのとき初めて片渕監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』をDVDで見たんですよ。それで、ものすごくびっくりした。泣かされた。それも尋常じゃないぐらい。監督に会いたいと思い、同時に“これは引き受けなきゃいけない。これを引き受けずに、何がプロデューサーだ。作家を世に出すのがプロデューサーの役目だ”と。苦労を背負い込むことになるけれど、会社としてもそういうことをやらないといけない時期。“片渕を男にしないのならば、プロデューサーの風上にも置けない”とさえ思いました」(真木氏)

こうの史代のマンガ『この世界の片隅に』のアニメ映画化を切望する片渕監督は、当初アニメ制作会社MAPPAの丸山正雄社長に打診。丸山はそれを受けてアニメ化権を獲得し、資金調達に乗り出すが、当初、想定していた上映時間2時間30分、制作費4億円の実現は困難を極めた。困った丸山はかつて『千年女優』などで共に仕事をした真木に声をかける。真木の「これを受けないで、何がプロデューサーだ」という発言には、多分に浪花節的な心意気を感じるものの、真木のそんな意気込みを覆すほど、当時このプロジェクトの前には大きな壁が立ちはだかっていた。

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