(第10回)「書く、伝える、人を動かす」 エントリーシートの書き方(序章)

(第10回)「書く、伝える、人を動かす」 エントリーシートの書き方(序章)

福井信英

 仕事柄、多くの学生から就職活動に関する様々な相談を受ける。
インターンシップ選びや、就職活動を始めたばかりの学生が、まず最初に悩む課題は「エントリーシート」ではないだろうか。

 「エントリーシート」はここ10年ぐらいの間にすっかり定着した選考手法で、学生に志望動機や自己PRなどを書かせ提出させ、企業はそれを読み、実際に面接に呼ぶかどうか決めるというものだ。
 数多ある選考手法には、苦言を呈したくなるものが多々あるが、私はこの「エントリーシート」という手法はとても高く評価している。良くも悪くも、自分自身を言葉一つで効果的に表現しなければいけないからだ。

 学生にとっては、

・どのような文章を書けば、相手の心を動かすことができるか。
・どのような文章を書けば、相手から自分の望むような結果(面接に呼んでもらう)を得られるか。

 このようなことを考える初めのきっかけになっていると思う。
 「相手の心を動かし、望む行動を促す」そのための文章を書く、というのはビジネスパーソンにとって基本的なスキルであると同時に、最も重要なスキルの一つでもある。
 いわば、「エントリーシート」は基本的なビジネスパースンとしてのスキルを測る効果的な選考方法なのだ。
 選考基準は各社によって違うけれど、あえてひとつにまとめていうと、「私が、会ってみたいと思うかどうか」だ。


 小・中学生時代の作文に求められるスキルは、感じたことを情緒豊かに、素直に表現する能力だった。
 高校時代の小論文に求められるスキルは、要点をまとめて主張するというスキルだったろうか。
 大学時代のレポートに求められていたのは、本当は「鋭い洞察を持って、教授の心を動かし、知的刺激を与え合うことで相互に高めあう」ことなのだろうが、実際は単位を取るための「作業としてのレポート」になっているケースも多いのではないだろうか。(僕はそうだった。教授、ごめんなさい。)

 真剣に書かなくても、なんとか生きてこれた。
 真剣に文章力を問われる機会がこれまでそんなになかった。

 ところが、就活は違う。入りたい会社が人気であればあるほど、エントリーシートで落とされる。
 新卒で入社する会社によって生涯賃金が平気で1億や2億変わってくる時代だ。
 興味のある会社がある。入りたい会社がある。
 面接に呼んでくれるならまだしも、書類一つで落とされるのは嫌だ。
 そう思うのが正直な感覚だろう。しかし、現実は書類一つで落とされてしまうものなのだ。
 だから、必死になって、「何を書くか」考える。
 文章力だけだと、片手落ちだ。「書けるような何か」が必要だ。
 「書けるような何か」を探し始めた瞬間に、大学時代はモラトリアムを満喫する時代ではなく、社会に出る前に己を磨く最後のチャンスであることに気付くのだ。

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