「7人の侍」が実現した、ジャーナリズムの夢

編集部なし、オンラインと専門化で生き残り

 ニュースは、モバイルで、リアルタイムで、生きている。誰もが、そんな魅力的な生き物を追いかける。スマートフォンやタブレット端末は、この「生き物」を、瞬時に捕らえることをますます可能にした。
 では、ニュースを私たちに提供するメディアは、進化しているのか。新聞やテレビなど一方的で伝統的なメディアは、日本でも米国でも、デジタル時代の新たなビジネスモデルを見いだせず、苦戦を強いられている。
 しかし、米国では、ニュースの真実の姿に迫り、伝統的メディアを刺激する役割すら果たすオンラインのニューメディアが登場している。活気あふれる米国メディアの最前線を、動画インタビューを盛り込みながら描く。
 

編集部を持たないニュースメディア

6月上旬、ニューヨーク・ブルックリンにある、「InsideClimate News(以下ICN)」のオフィスを訪ねると、入り口は弁護士事務所の扉。弁護士の名のほかは、ICNの表札もない。場所を間違えたのかと不安になるが、思い切って入ると、受付の黒人女性に「お待ちください」と言われて、ほっとした。

通された明るい角部屋は、8畳間ほどの広さで、テレビすらなく、寂しく静まりかえっている。一体、記者たちはどこにいるのか?

実は、ここはICN創立者で発行人デビッド・サスーンが、個人で借りているオフィスだ。ほかの記者ら計7人は、ニューヨーク、ボストン、ワシントン、カリフォルニア州サンディエゴ、イスラエルのテルアビブの5カ所に在住し、ほとんどが自宅勤務だ。新聞社などで記者と編集者が集まるニュースの製造工場、ニューズルーム(編集部)を彼らは持たない。

サスーンを訪れたのは、今年4月15日にICNがピュリッツァー賞国内ニュース部門を獲得したからだ。ボストン・マラソンのゴール近くで爆破テロ事件が起きたのと同じ日、賞に応募した米国中の新聞社が、受賞結果を流す速報にも注目していた。1917年に創設され、米国の新聞に掲載された記事で「卓越した」報道や写真に送られる、ジャーナリズムで最も権威ある賞だ。

ところが、数十人の地方新聞社から1000人規模の編集部がある有力新聞まで、記者らがピュリッツァー賞の受賞結果を待っていると、スタッフが7人だけで紙面も持たないオンラインニュースのICNが、「国内ニュース部門」をかっさらった。

なぜ、この型破りなICNが、全米の新聞社が望んでやまない受賞をかなえたのか?

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