参議院は良くて無用、悪いと有害? 権力の集中と、その過度の抑制をどう考えるか

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強い二院制、弱い二院制

どの国でも、第一院は全国民が平等に参加できるような選挙制度で代表を選出する。しかし、第二院の構成は国ごとに大きく異なる。アメリカやドイツのような連邦制の国では、全国民の代表というより地方(自治体)の代表という性格が強くなる。

アメリカ上院では人口の大きく異なる各州が2名ずつ代表を選出するし、ドイツの連邦参議院は、各州政府が議員を任命することとなっている。

日本では馴染みがないが、第二院の議員選出に任命制を取り入れている国は少なくない。任命制とは、知識や経験に優れた人々を、選挙を経ず議員とするものだ。「世襲」議員も入るイギリスの貴族院はその特殊な例であるといえる。

第二院であえて地方(自治体)の代表や任命制を強調し、第一院と選出基盤の異なる議員を置くことは、第一院に対するチェック機能の確保を目的とする。特に、元来州に主権があり、連邦国家を構成した場合には、州の代表が、連邦に対する強いチェック機能を要請してきた文脈があると考えられる。

図に示すように、選出基盤の一致度合いが低く、かつ第一院と対称的な権限を持つのが、「強い第二院」である。第一院と異なる立場から議案を審議し、第一院の決定をブロックすることもできるからだ。

対して、第一院と同じような選出基盤で構成され、かつ権限の弱い第二院、図の「重要でない二院制」は、その存在意義が怪しいものとなる。

「弱い二院制」とされる残りの類型のうちの右下、選出基盤の一致度合いが低く、権限が弱い第二院を考えよう。選出基盤が違うため、第一院に異議を申し立てることは少なくないかもしれないが、権限が弱く効果は小さい。つまり、実質的に一院制のような運用がなされることになる。

問題は、図の左上、第一院と選出基盤が似ていて、権限も対称的な第二院である。ここでの第二院は、制度的に第一院の決定をブロックする強い権限を持っているが、多数派を構成するのが、基本的には第一院と同じような勢力になるため、それが実際に行使されることは少ない。その意味で、弱い二院制と分類される。

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