シャープ、業績上方修正でも残る液晶の不安 サムスンと決別、「AQUOS」復権狙うが…

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シャープ再建を進める戴正呉社長。決算では構造改革効果を見せつけた(撮影:梅谷秀司)

「黒字体質になってきた。これからはきっちり拡大路線を採っていきたい」――。2月3日に行われたシャープの2016年度第3四半期(2016年4月~12月)決算会見で、野村勝明副社長は業績回復に胸を張った。

同日発表した決算は、売上高が1兆4912億円、営業利益は189億円で着地した。北米における液晶テレビ製造事業からの撤退、スマホ向けの液晶パネルやカメラモジュールの需要減少で売上高は前年同期比23%減となったものの、戴正呉社長が8月の就任来推し進めてきた経費削減の効果が現れ、営業黒字化を達成した(前年同期は290億円の営業赤字)。この期間の円高基調も、家電やスマ―トフォンを海外で生産し、国内で販売する割合が高いシャープにとって追い風となった。

好調な業績を受け、シャープは通期の業績予想を上方修正。売上高は2兆0500億円(前回予想2兆円)、営業利益373億円(同257億円)とし、3期ぶりに営業黒字に転換する計画だ(持分法投資損失や減損で純利益は372億円の赤字となる見込み)。

本当に攻勢に出ることができるのか?

今後について、野村副社長は「今まで抑えてきた開発投資を増やしていく。反転攻勢に向け競争力強化を図っていきたい」と語り、経営再建が新たなフェーズに入っていることをアピールした。

ただ、経営不振の原因となった液晶事業に関して、回復の道筋が立ったとは言いがたい状況だ。親会社である台湾・鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は昨年末、堺ディスプレイプロダクト(旧シャープ堺工場、シャープとテリー氏の資産管理会社が共同で出資、以下SDP)名義で中国・広州に約1兆0300億円(地元政府からの支援額も含む)をかけて大型新工場を建設することを発表している。

2017年初には鴻海とシャープが共同で北米に新工場を建設する構想も明かした。投資規模は約8000億円にのぼるとされ、今後数年で鴻海グループの液晶パネル供給力はさらに拡大する見通しだ。だが、中国の液晶メーカーによる工場新設も相次ぐ中、販売先が見つからなければ在庫過剰に陥る危険もあるだろう。

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