「道路と線路を走れる車両」、実現に向け前進 「年内にも車両製作」徳島県知事が発言

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DMVを運行するためには、道路から線路へ、線路から道路へと乗り入れるための「モードインターチェンジ」と呼ばれる施設が必要となる。DMV導入協議会の資料によると、モードインターチェンジを設ける計画なのは甲浦駅と、海部駅の隣駅であるJR牟岐(むぎ)線・阿波海南駅。次世代交通課によると、阿佐東線内だけで完結していないのは同線の駅が全て高架のためだ。

高架駅にモードインターチェンジを設ける場合は、地上の道路と高架の線路をつなぐスロープなどが必要になる。資料に記載された現段階での案では、終点の甲浦駅にはスロープを設けるものの、もう一方のモードインターチェンジについては乗り入れの容易な地上駅の阿波海南駅とする計画だ。同駅は地上であるだけでなく、すぐそばを国道55号が通っていることから「使い勝手が良いだろうということで検討している」(次世代交通課)という。

一方、阿波海南駅を含む牟岐線を運行するJR四国は「当社はDMVの運行ノウハウは持っていないので、協力できる部分は協力するが、当社の路線にDMVを乗り入れることは考えていない」という。

国交省技術評価委の中間とりまとめでは、DMVは「専用線区」での運行を前提に評価が行われており、DMV導入協議会の資料でも、DMVの運行区間は一般の鉄道車両が走る牟岐線とは切り離すとしている。このため、甲浦-阿波海南間でDMVを運行するとすれば、現在はJRの区間である海部-阿波海南間をどのような扱いにするかが今後の一つの課題となるだろう。

来年度予算に車両製作費用を計上方針

 年頭の会見で飯泉知事は、2017年度の当初予算案にDMVの車両製作費用を盛り込みたいとの意向を示している。製造を行う企業間の調整が終わり次第、1月末から2月初旬に2回目となるDMV導入協議会を開催し、これを受けて予算要求を行いたいとの方針だ。次世代交通課によると協議会の日程は今のところ決まっていないが「来年度予算に(車両製作費を)盛り込めるよう進めていきたい」という。

当初開発が進められた北海道から離れた南国・四国で実現可能性が見えてきたDMV。車両製造や運行区間など課題はまだ多いものの、今後の進展が注目されるプロジェクトであることは間違いない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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