鳥取「弱小鉄道」を救ったIT出身社長の手腕

若桜鉄道再生の裏にあるマーケティングとは

鳥取県のイメージカラー「ピンク」に塗り替えた期間限定の「ピンクSL」(若桜鉄道提供)
2014年に鳥取県東部を走る第3セクター鉄道の若桜鉄道社長に就任した山田和昭氏は、外資系IT業界出身という異色の経歴を持つ。「SL走行社会実験」「ラッピング列車」という数々のイベントの背景には、前職で培われた緻密なマーケティングがある。『希望のレール』(祥伝社)を著した同氏に、マーケティング理論を若桜鉄道にどう応用したか語ってもらった。

 

まず、最初に問題です。

Q 「営業」と「マーケティング」の違いは何でしょうか。

ヒントは、その主体がどこにあるのか、ということですが……。もったいぶらずに答えを申し上げましょう。

A 営業は「売り込む」、マーケティングは「欲しくさせる」。

付け加えるなら、営業は「営業マンが顧客に売り込む」、マーケティングは「顧客に欲しくさせる仕組みをつくる」というところでしょうか。自動販売機でも売れる仕掛けをつくるのがマーケティングです。鉄道の場合、お客様一人ひとりに営業をかけることは不可能です。鉄道のお客様を増やすならば、マーケティングの手法が必須となるのです。

「戦略」と「戦術」の違いを理解する

「事業戦略」を立てる際には、大きく「戦略」と「戦術」に分けて考えます。まず「戦略」とは「ここに行けば勝てる」というドメイン(場所)を見つけることです。体力のない会社は、お客様が多い市場に参戦しても強力なライバル(競合)との競争に勝てません。何しろ若桜鉄道は社員18人、保有する車両は4両という零細企業です。ライバルと戦わずにすむ、もしくは容易に勝つことができそうな、いわゆる「ブルー・オーシャン」を探すのが常道です。

若桜鉄道の場合、運輸業というドメインだけでは過疎化とモータリゼーションが進む地域では展望が開けません。そのため、観光や商業振興を通じて鉄道輸送の需要を作りつつ、地域経済を回して人口減少を食い止める「地域プロデュース」で生き残る戦略をとりました。地域密着のローカル鉄道の強みを生かせるドメインです。

ここからは、地域プロデュースというドメインで「こう戦えば勝てる」ことを組み立てる「戦術」です。

以下、①、②、③とステップを踏んで戦術を作ります。

① ターゲット選定、競合特定

対象にすべきターゲット=顧客を絞り込む。そして、ターゲットが競合ではなく自社を選ぶようにするにはどうするかを考えます。

体力もキャパも無い零細企業は、自社にとって理想的な顧客をターゲットとして絞り込む必要があります。

ターゲットを絞る際には、ターゲットの規模(人数が多いなどの大きさ)・収益性(想定される客単価など)・競合(強力で相手にならない競合がいないか)・成長性(将来に人数や金額が伸びるか)・到達性(宣伝や告知が届くか)などを見て、地域や年代やライフスタイルなどから「こんなお客様に来てほしい」という理想の相手をみつけるのです。

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