日本の行政は商業地を起点に街をつくれない 団地とショッピングモール開発は何が違うか

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川崎駅西口のラゾーナ川崎(写真:yyama / PIXTA)
「ラゾーナ川崎」が川崎駅の人の導線を変えたように、ショッピングモールの存在は、街の姿を大きく変貌させる。一方、日本の行政は、住宅地造成にばかり力を入れてきた。はたして、今後、変化はあるのか?作家・思想家の東浩紀氏とフォトグラファー・ライターの大山顕氏の対談をまとめた『ショッピングモールから考える』(幻冬舎新書)の一部を抜粋して、ショッピングモールを切り口に街づくりの肝を探る。

ショッピングモールでもはや家電は売られていない

大山顕(以下、大山):バンコクのショッピングモールでは、まったくと言っていいほど家電屋を見かけませんでした。ショッピングモールについては、時代の推移とともに何が中心になってきたのかを知りたいですね。松下電器産業(現・パナソニック)は2000年まで、梅田の百貨店に巨大なショールームを持っていた。しかしいまは、家電はモールにおいて中心となる機能を果たさない。モールのなかで唯一家電を売っているのは無印良品だったりする。無印良品は家もつくっていますね。

東浩紀(以下、東):イケアはどうですか。

大山:すべてのモールはイケア的になるのではないかと思っています。イケア的というのはつまり、動線がひとつに固定されて、定められたコースを順路通りに見ていく構造ということですね。

:ラゾーナ川崎だと、出店している店舗が頻繁に入れ替わるようです。そういう変化が、ショッピングモールには不可欠かもしれません。

大山:ラゾーナができるまで、川崎駅の西口には何もなかった。東芝の工場の跡地だったんですね。そこにラゾーナができたことで、川崎駅と線路が、東西の街を隔てる境界線になった。東側はいわば旧市街で、西側のラゾーナワールドとはいる客層がまったく違う。川崎駅には改札がひとつしかないのですが(ただし、2017年にはふたつになるよう)、そこで東に行くか西に行くかは、改札を出る前になんとなくわかります。

ところで専門的な話になりますが、建築的な観点からすると、ショッピングモールの内装で進化しているのはたぶん柱です。古いモールと新しいモールを比べると、柱の収め方や演出の仕方が全然違う。新しいモールは柱の扱いがとてもうまくて、それが柱であると感じさせない。面白いのは空港のショッピングエリアってすごくモールに似ているんですが、大きな違いは柱がない点。なので、わざわざ柱的なものを立てて、そこにバナーなどを設置しているんですよね。せっかくの無柱大空間なのに。

ホートンプラザの中心部。迷路のようなデザインとポップな色使いが印象的だ

ショッピングモールの歴史にと輝く、サンディエゴのホートンプラザというショッピングモールがあります。

これを手がけたのは、ジョン・ジャーディという、商業施設のデザインの第一人者です。日本では博多のキャナルシティが彼の設計によるものです。ぼくは大学で先生の研究室にいたのですが、彼はキャナルシティのプランニングにかかわっていて、ジャーディともつながりが深い。ぼくが学んだ街路のつくり方も、ジャーディに由来するものだった。

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