「道路と線路を走れる車両」、実現に向け前進 「年内にも車両製作」徳島県知事が発言

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DMVは道路と鉄道の両方を走れるだけでなく、一般の鉄道車両よりも運用コストを抑えることができる。さらに車両自体が観光の目玉にもなるため、路線や地域の活性化につながることから、阿佐東線への導入に向けた検討が進められてきた。

2011年11月にはDMVの夜間試験走行、さらに翌年2月には乗客を乗せたデモ走行も実施。2016年3月には徳島県、高知県や地元自治体などによる「阿佐東線DMV導入協議会」を設置し、5月に開いた初会合では導入に向けた今後の検討事項などが議論された。

阿佐東線は、徳島県のJR牟岐(むぎ)線海部駅から高知県の甲浦(かんのうら)駅までを結ぶ全長約8.5キロメートルのローカル線。旧国鉄時代に着工されたものの建設が凍結されていた路線を引き継ぎ、1992年に開業した。だが、同年には約17万6000人だった利用者数は、2010年には約3万8000人まで減少した。

東洋経済オンライン2016年10月3日付記事「100円稼ぐのに1224円必要な鉄道があった!」によると、同社の2013年度の営業係数(100円の収入を得るのに必要な経費)は1222.6と、全国の第三セクター鉄道中でもっとも悪い。

観光振興の目玉に期待

 だが、DMVの実証試験を行った2011年以来、乗客数はわずかながら回復傾向だ。会見で飯泉知事は「実証試験を契機に5年連続で対前年比増となっている。DMVが実用運転されれば、その効果は非常に大きなものが期待される」と述べ、観光資源としての期待の高さを示した。現在、阿佐東線を利用する観光客は「春から秋にかけてのお遍路やサイクリング客が主体」(阿佐海岸鉄道)。DMVが運行されれば「これらの観光利用に加え、それ自体に乗りたいという要素が加わる」と期待する。

DMVが走れるのは、当然ながら線路上だけではない。道路を走行して向かう目的地については、会見で飯泉知事が室戸(高知県)を「一つのターゲット」と述べた。高知県はDMV導入協議会の会員であるほか、阿佐海岸鉄道の出資者にも名を連ねている。同県も「四国東南部地域の活性化に向けて実用化に期待している。室戸への延伸には課題もあるが、徳島県と連携しながら実現に向けて進めていきたい」(交通運輸政策課)と前向きな姿勢を示す。

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