音声プラットフォーム「覇権戦争」の硝煙 アマゾンとグーグルの争いが激化

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プラットフォームが動作する環境の問題もある。アレクサは今のところ、家庭向けデバイスの「エコー(Echo)」とオフィス向けデバイスのエコードット上でしか利用できない。これに対し、グーグルアシスタントは、グーグルホームとピクセル、そしてグーグルの新メッセージングアプリである「アロ(Allo)」でも使えるが、それにとどまらない。今後登場するAndroid OSの各バージョンや、車載OSとなるAndroid Autoでも利用できる可能性がある。

グーグルのプラットフォームは、さまざまなデバイスに広がることにより、一気に普及する可能性がある。というのも、先述のデバイスのうち少なくともひとつは、ヒット商品になるとみられるからだ。モルガン・スタンレーのアナリストらによる予測では、ピクセルは2016年の最後の3カ月で300万台販売され、2017年もさらに200万~300万台売れるという。予測どおりになれば、総利用者数の点で、ピクセルは一気にアレクサと肩を並べるまでになるはずだ。アレクサは、2016年末までに約400万台が売れると予想されている。

こうした違いにもかかわらず、両プラットフォームに大差はないとみなすパブリッシャーも存在する。ボイスラボのマーチック氏は、多くのアクションとスキルが非常によく似たコードから作られている点を指摘。リーチの範囲をできるかぎり広げたいパブリッシャーにとって、両者は別々だが同様だとみなすメリットがあるのだ。

「両プラットフォームがかなり大勢のオーディエンスにリーチできる点を考慮して、われわれは製品開発を拡張する体制を強化している」と、ハーストのコーポレート・テクノロジー・グループに在籍するクリス・パパレオ氏は明かす。

「一度アレクサ向けに開発し、Googleアシスタント向けに再び開発することは、必ずしも二度手間ではない」

文脈に合うことが大事

だが、ほかのパブリッシャーたちは、プラットフォームが二つあると、研究開発を担う体制も倍になると考えている。実際、ハフィントン・ポストは、アレクサでニュース解説を、Googleアシスタントでニュースに絡めたクイズゲームをそれぞれ提供している。ただし、同メディアでプロダクト部門を率いるジュリア・バイザー氏にとっては、一方で学習したことはもう一方への移植が可能だ。

「われわれはごく最近、消費者がこうしたデバイスでどのようにニュースを入手しているかを学ぶ段階に入ったばかりだ」と、バイザー氏は語る。「今後は、このプロジェクトから得た教訓を生かし、2017年には音声とAIを活用する取り組み全般を進化させるつもりだ」。

シンプルな事実は、消費者もパブリッシャーも同じように、音声アシスタントの最良の活用方法を見つけたがっているということ。そして、この事実が動機となり、誰もができるかぎりさまざまなことを試みている。「パブリッシャーにとって最良のプラットフォームは、消費者によって決まるだろう。コンテクスト(文脈)にうまく合うことが何より重要だ」と、ボット開発企業ガプシャップのCEOを務めるビールド・シェス氏は語った。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)

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DIGIDAY[日本版]編集部

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