鉄道メーカー「世界3強」、格差広がる台所事情

政府支援仰ぎ、身売り観測に中国が触手も?

鉄道見本市「イノトランス」に設置されたアルストムの企業ブース(記者撮影)

鉄道車両メーカーの「ビッグスリー」といえば、フランスのアルストム、ドイツのシーメンス、そしてカナダのボンバルディア(鉄道の本拠地はドイツ)を指す。売上高だけを見れば、中国の2大鉄道車両メーカーが統合して2015年に発足した中国中車が世界最大だ。しかし、世界の鉄道事業者がビックスリーに寄せる信頼性は揺らぐことはない。

「2020年までにすべての大陸でシェア1位か2位を狙っていく」――。

アルストムのアンリ・プパール・ラファルジュ会長兼最高経営責任者(CEO)は2016年9月20日、鉄道国際見本市「イノトランス」(ベルリン)の記者会見の席上で、自信に満ちた口調でこう語った。

「現在のアルストムのシェアは米国で2位、欧州で3位、中東・アフリカで2位、アジア太平洋で2位だ」(ラファルジュCEO)。しかし、近年は中国中車、日立製作所、そして東欧やスイスの中堅車両メーカーが台頭し、同社といえども安閑としていられない。

そこで営業力強化のために3億ユーロ(約360億円)を投じ、地元企業の協力も得ながら受注増を目指していく構えだ。ちなみに日本での戦略については、「日本ではすでに国内の車両メーカーが多くひしめき外国企業の参入が難しいため、アジア太平洋全体でシェア1位か2位を狙う」(ラファルジュCEO)としている。

エネルギー事業をGEに売却し鉄道専業に

アルストムは2015年に屋台骨のエネルギー事業を米ゼネラル・エレクトリック(GE)に97億ユーロ(約1.2兆円)で売却、一方でGEの鉄道信号システム事業を譲受したことで鉄道専業メーカーに生まれ変わった。前2016年3月期はエネルギー事業の特別損失がなくなり黒字転換。今2017年3月期も第2四半期時点まで順調に売上高と利益を伸ばしている。

ただ、お膝元の欧州ではシェア3位。2020年までの目標からすればシェアアップが喫緊の課題となっている。

ラファルジュCEOには"隠し球"がある。イノトランスの記者会見が開かれたおよそ2週間前の9月7日、アルストムはフランス国鉄と次世代型高速列車(TGV)を共同で開発すると発表している。最高時速は320キロメートルに据え置くが、製造コストの20%削減、エネルギー効率の25%向上、1編成当たりの定員を20%増やすといった効率重視の列車を最大200編成製造するというものだ。しかし、その営業運転開始は2022年とされており、シェア1位~2位を目指す期限に設定した2020年には間に合わない。つまり、次世代TGVは隠し球ではないということだ。

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