英国やメキシコに投資したり、欧州や米国市場へのリーチを目論んだりしている日本の多国籍企業の多くは、英国のEU離脱と米国でのドナルド・トランプ大統領誕生という「二重苦」に直面している。
トランプは大統領選中に北米自由貿易協定(NAFTA)との再交渉に関して言及し、思うような結果が得られない場合は脱退することさえほのめかしている。また、中国からの輸入品に対して45%の関税を課すことについても言及している。日本から中国へ輸出されている製品の相当部分が、最終的には米国に輸出される製品に使われているため、これは日本企業の経営陣にとっては頭の痛い問題だろう。
トランプ支持者が信じていること
トランプの一連の発言は、単なる個人的な気まぐれ、と簡単に切り捨てられるようなものではない。こうした過激な発言によってトランプが以前は民主党が強いとされていた中西部の激戦区5州を押さえることができたとまでは言えないものの、こうした地域の有権者のトランプに対する期待感は高いからである。
今回オバマから「寝返って」トランプに投票した有権者の多くは、NAFTAや中国によって職が奪われたり、賃金が下がったりしていると信じ込んでいる。実際、トランプに投票した人の68%は、自由貿易協定 (FTA) は米国にとって悪いものであると考えており、これはヒラリー・クリントン支持者でそう考えている人(32%)を大きく上回る。
トランプが仮にこうした危険をはらんだ政策を実施した場合、日本企業が被る主な損失は、メキシコ、または日本からメキシコを経て米国に輸出される製品への直接的な影響によるものではないだろう。英国に対する投資は日本がこれまで行ってきた全投資の7%なのに対して、メキシコに対する投資はわずか0・5%に過ぎないからだ。同様に、日本からメキシコへの輸出は、日本の世界に対する総輸出のわずか1.7%だ。
ただし、日本経済にとって重要産業である自動車製造業にとって、メキシコの重要性は年々増している。現在、メキシコの自動車生産量の23%を日本の自動車メーカーが占めているほか、米国への自動車輸出ではメキシコが日本を上回り、世界2位となっている。つまり、メキシコは、日本の自動車メーカーにとって米国市場だけでなく、中南米市場にリーチするための重要な拠点となっているのである。
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