トランプ大統領で米国経済は強くなるのか 大型減税、財政拡張など政策の効果を予測

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トランプ次期大統領と商務長官に指名された投資家のウィルバー・ロス氏(左)、ペンス副大統領(右)(写真:ロイター/アフロ)

「米国を再び偉大に」と訴えて選挙で勝利したトランプ次期大統領は、今後10年で米国の経済成長率を4%に高める目標を掲げている。OECD(経済協力開発機構)は米国の潜在成長率を1.6%と推計しているので、これを倍以上に高める野心的なものだ。

その手段として挙げているのが、大統領就任から100日間で断行する経済政策である。(1)連邦法人税率を35%から15%に引き下げる企業税制改革、(2)企業の海外資金を国内に還流させるための10%の軽減税率(従来は15%)、(3)中間層の大幅な所得税減税、(4)10年間で1兆ドルに上る戦後最大のインフラ投資、などが盛り込まれている。

潜在成長率高まらず効果は短期にとどまる

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大型減税や財政支出の拡大は、短期的にはGDP(国内総生産)成長率を押し上げるだろう。ただし、トランプノミクスによる所得の再配分は製造業など「オールド・エコノミー」に偏りそうだ。経済成長の要因は「労働」「資本」「全要素生産性」に分解されるが、トランプノミクスの政策効果が顕在化するのは恐らく「資本」に限定されよう。移民排斥は「労働」の寄与度を落とす。そうなると潜在成長率は高まらず、好況は短命に終わる公算が大きい。

実際、複数の米シンクタンクがトランプ政権下の経済動向に悲観的な見方を示している。「税政策センター(Tax Policy Center)」は、トランプ次期大統領の税制改革によるGDPへの影響を推計している。これによると2017年には1.7%の押し上げ効果が見込めるが、時間の経過とともに逓減し、大統領初任期の最終年に当たる2020年には0.3%まで低下するとみている。また、「ピーターソン国際経済研究所」は米国自身の保護主義を起点として世界貿易が縮小するなどの供給ショックもあって、米国が1、2年後には景気後退に陥るというリスクを指摘している。

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