LINE「無料出張授業」に依頼が殺到する理由 超リアルな情報教育は、ここまでこだわる

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それぞれの質問に明確な答えはない。生徒自身に気づかせる仕組みだという(写真:記者撮影)

「まじめだね」「おとなしいね」「一生懸命だね」「個性的だね」「マイペースだね」。さて、この5つの言葉をあなたが他人に“言われたくない順”に並べ替えるとしたら、どうなるだろうか。LINEが小中学校で行う「情報モラル教育出張授業」の基礎編は、そんな一風変わった問いから始まる。

実は「これを選んだあなたは……」というような答えは存在しない。

「班ごとに話し合ってみると、『個性的とだけは絶対言われたくない』という意見も、『それは別にいい』という意見も出る。それこそが授業の狙い」。教育工学や授業デザインを専門とし、この授業を監修している静岡大学の塩田真吾准教授はそう語る。

授業数は年間2000回!

国内に6400万人の月間利用者数を有するコミュニケーションアプリ・LINE(2016年9月末時点)。家族、友人、職場の同僚間など、あらゆる場面の連絡手段として日常的に使う人が増える中、会話のグループから排除される「LINEいじめ」や、過剰なやりとりを強いられることによる「LINE疲れ」など、負の側面も取りざたされている。

基礎編の質問カード。人によってされたくない行為の順番はかなり異なるという

そんな中でLINEが企業として力を注ぐのが、ネットにおけるコミュニケーショントラブル防止のための出張授業だ。2014年に塩田准教授と共同研究をスタートし、2015年に「基本編」「悪口編」「写真編」「使いすぎ編」の教材を発表した。同時に、教員向けのセミナーや、LINEで研修を受けた講師を各校に派遣する体験型授業をスタートさせた。

これらの教材は一般に公開されており、ネットを通じてダウンロードできる。教員自身が自前で授業を行うことも可能だ。

出張授業は年間2000回に上る。「先生同士は学校を超えた横のつながりが強く、口コミで評判が広がった。要請があった学校には、北海道から沖縄まで全国どこでも行っている」(LINEのCSRチーム公共政策室の浅子秀樹マネージャー)。講師陣は約20人だが、今は申し込みから派遣まで、3~4カ月待ちの状態だという。講演にかかる費用は交通費を含め無料だ。

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