飛行17時間!「夢の英豪直行便」就航の秘密 ロンドン-パース1万4500キロをひとっ飛び

✎ 1〜 ✎ 24 ✎ 25 ✎ 26 ✎ 最新
拡大
縮小
欧州―豪州ルートに積極的なエミレーツ航空(ドバイにて筆者撮影)

オーストラリアが英連邦の一員ということもあり、英国とオーストラリアに分かれて暮らす家族は意外と多く、業務上の交流も盛んなことから、両国の間は遠距離だが往来需要はとても大きい。

もともと直行で飛べないルートなので、英豪を結ぶ途中の国々にある航空会社は、英豪間を飛ぶ利用客の乗り継ぎ需要を取り込もうと積極的にセールスしている。

日系キャリアも参戦、激しい英豪線のシェア争い

両国間を飛ぶ際には、英連邦というつながりでシンガポールやマレーシア乗り継ぎ、あるいはかつて英領だった香港を経由して飛ぶのが比較的常套手段と考えられている。

かつてはこの案内ボードに豪州行きBA便が並んでいた(シンガポール・チャンギ空港にて筆者撮影)

ところで今回直行便を飛ばすことにしたカンタス航空は、長年にわたってブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とともに、シンガポール乗り継ぎのサービスを続けていた。

しかしこの安定しているように見えた蜜月関係が2012年9月、突如瓦解した。カンタスに対し、中東のエミレーツ航空が「ドバイを欧州―豪州ルートのハブに」と提案して来たからだ。エミレーツ航空の欧州一円に広がるネットワークは新たな集客源にも繋がる。そんな事情もあって、カンタスは2013年4月、欧州―豪州間の主要乗り継ぎハブをシンガポールからドバイへと切り替えた。

欧州―豪州間ルートをめぐっては、ドバイと中東でのハブ争いに挑んでいるアブダビ拠点のエティハド航空もシェア獲得に躍起となっている。これに加え、中国やベトナムを拠点とする各社、さらにANAも欧州便とシドニー便とを成田で繋ぐというプランでシェア取り込みに参戦している。

自分が行きたい目的地に行く際、直行便を利用すれば最短時間で飛べる点が大きな利点。特に日本人ビジネスマンが出張する場合、費用が多少高くても乗り継ぎ便を避ける傾向が強い。しかし、10時間を超えるような目的地に行く際、あえて途中で気分転換も兼ねて乗り換える、というプランも悪くない。今回就航が決まった英豪間直行便のように17時間にも達するフライトに乗った時の身体的負担を考えると、比較的チケットが安くて、乗り継ぎの際に息抜きができる経由便需要も確実に残るはずだ。

顧客のニーズが多角化する中、超長時間フライトはどのくらい需要があるのか。多くの航空関係者がその成否を見守っていくことになるだろう。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT