「東大へ行く」ことが大きな意味を持つ理由 「経験」があれば言葉に重みが生まれる

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たとえば横井さんは、「教育を受験志向から変える」ことを成し遂げたいと思っています。当然、ひとりではできませんよね。賛同してくれる仲間を増やさないといけません。そのときに、受験の経験がある人と、受験の経験がない人のどちらの意見を周りは聞き入れるでしょうか?

当然前者だと私は思います。なぜならば、前者は実際に自分で経験をしてきたことに対して語っており、単なる机上の空論だけではないであろう、ということも想像できるからです。

異なる例ですが、一時期「海外MBA(経営学修士)は日本に不要である」という論調を展開されている人が多くいましたが、同じ「MBAは不要である」という結論だとしても、その論理展開や理由は、実際に行かれた人のほうが格段に優れていたものです。反対にMBAを取得していない人の論調は、感情論であったり、分析が甘かったりで、なぜそういった結論につながるのかが不明な人が多かったように感じます。下手をすると、単なる「ひがみ」のようにも見えたわけです。

非常に簡単に言ってしまうと、その違いは言葉に説得力があるか否かなのです。そして説得力を醸し出すのに、「経験がある」ということほど力強いものはないわけです。

説得力があれば賛同者も増える

したがって、現状の教育制度を変えたいと考える横井さんにも、ぜひ実際に現状の教育制度における最高峰を目指していただきたいのです。敵(現在の教育制度)を倒そうと思ったら、敵を徹底的に研究し、知り尽くさないといけません。何事も根本の問題がわからないことには、問題解決にはつながらないのです。

そして、経験があるほうが言葉に説得力が生まれます。説得力があれば賛同する人も増えるでしょう。賛同する人が増えれば、それは単なる「個人の意見」から、多くに「シェアされるアイデア」へと変わるのです。そしてそれが変革の第1歩となります。

「悩んでいる人を助けたい」という横井さんの、もうひとつのやりたいことも同様です。自分が強いからこそ、悩んでいる人を助けることができるのです。自分に経験があるからこそ、その経験を基に力強いアドバイスができるのです。「世のため、人のため」そういうことを言う人は多くいます。言うだけならば誰にでもできます。ただ、実際に小さくとも誰かの心に変革を起こせる人は、実際に自分が口だけではない行動をして、何かしらの結果を出してきた人だけです。

人を変えようと思ったら、自分自身が変わった経験を持っていないと無理でしょう。人の心を動かそうと思ったら、自分自身が行動を通じて自分自身の心を動かさないといけません。

教育制度も、心のサポート役も、実際に自分が経験して、成し遂げた、乗り越えた経験があって初めて、リアルな言葉でもって他人の心を動かすことができるのです。人を動かすためには、情熱と力強い言葉、一貫した志が必要です。そしてそのすべては経験から生まれるのです。受験勉強を通じて受験を知り尽くし、最高峰の学校に入り、そのよさも弱点もわかったうえで変革を目指されるのであれば、現在お持ちの考えもよりリアルなアイデアへと変化することでしょう。

教育という、人を変えるうえで、人の人生を左右するうえで非常に重要な対象に、横井さんのような若い人が変革をもたらすであろう日を楽しみにしております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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