イタリア国民投票「否決」は何をもたらすのか ポピュリスト政権やユーロ離脱につながるか

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今回の国民投票を受けて、レンツィ首相は辞任を決めた。マッタレッラ大統領は、後継首相を指名し、暫定政権樹立という流れをたどるだろう。現議会の任期は2018年5月。野党も早期解散への圧力を強めるとみられる。暫定政権は2017年度予算と下院選挙制度の修正改革法案を成立させるなどの限定的な役割を果たすに留まりそうだ。

英国がEU離脱を選んだ6月の国民投票、米国がトランプ氏を選んだ大統領選挙の大勢判明は日本市場の取引時間と重なった。

英国国民投票の結果判明時は大幅な株安と急激な円高が進み、緊張が高まった。米大統領選挙では、当日こそ株価が大きく下げたが、翌日には反発、リスク回避の円高という予想に反してドル高円安が進んだ。

今回のイタリア否決ショックは限定的

今回は、票差こそ開いたものの、想定された結果であったことから、本稿執筆時点(5日日本時間10時)で日本市場の受け止めは冷静だ。首相辞任後の政治的混乱の収拾にメドがつくまでユーロ、イタリア国債、イタリア銀行株には売り圧力がかかりやすいが、トランプ大統領選出以降の世界的なリスク・オンのムードを変えるほどの影響はないと考えている。

イタリアの否決ショックが、水準的にも地域的な広がりの面でも限定的と考える理由は2つある。

1つは、先に述べたとおり、国民投票の否決イコール反エスタブリッシュメントでもないし、ポピュリスト政権の誕生、ましてユーロ離脱に直結するわけでもないことだ。

もう1つは、現在のユーロ圏は、参加国や銀行に売り圧力がかかった場合のバック・ストップを備えていることだ。

国民投票前から、イタリア国債のドイツ国債に対するスプレッドはじわり拡大、イタリア・リスクへの警戒は高まっていた。それでも、10年物で国債利回りは2%を超えるかどうかというところ。ECB(欧州中央銀行)の月800億ユーロの国債等の資産買い入れがバッファーとなっている。2011~12年のユーロ危機のピーク時のように7%の支援要請ラインをうかがうような展開は考え難い。仮に、急激な利回り上昇に見舞われた場合には、イタリア政府は、ECBの金額無制限の国債買い入れプログラム・OMTを利用できる。

銀行セクターも、不良債権の処理と資本調達は難航しそうだが、資金繰りの問題からシステム危機に発展するようなことはない。ECBはゼロ金利で金額無制限の流動性を供給しており、期間4年のターゲット型資金供給も3カ月に1度の頻度で実施している。

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