「できる女」ほど日本ではモテない根本理由 問題は女性自身の意識にある

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山田 昌弘(やまだ まさひろ)/1957年生まれ。東京大学文学部卒業。東大大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東京学芸大学教授などを経る。専門は家族社会学、感情社会学、ジェンダー論。「パラサイト・シングル」「希望格差社会」「婚活」「家族難民」などの言葉で日本社会の動向を先取りしてきたことで知られる(撮影:今井康一)

──この際のモテるとは。

モテるといってもたくさんの人にモテることが目的の用語ではない。親密な関係が得られるかどうかの表現として使っているのだ。

──「できない男は女にモテない」と言っているにも等しい……。

女は女らしく、男は男らしくという、旧態依然とした価値観が今も生き残っている。この性別規範が社会から消えないのは、どういう相手を性愛の対象として好きになるかという、人の「感情」と固く結び付けられているからだ。しかも面倒なことに、性別規範は男女非対称にできている。だから、「できる男はモテる」が、「できる女はモテる」とはならない。

──男女非対称?

家族社会学、ジェンダー論を研究してきて、いろいろなところで男性と女性のこの非対称性がずっと気になってきた。「近代社会における」と限定されるが、男性の生き方と女性の生き方のつらさが社会構造的に違うことが観察されてきた。性別役割分業における男は仕事、女は家事という概念と、どういう人と結婚したい、どういう人を好きになるかという構造は、実は裏で結び付いている。この結び付きを解かないかぎり、結婚問題にしろ家事負担の問題にしろ、なかなか答えは出ない。

非対称性が大いなるネックだ

──生き方のつらさとは。

できない男性、つまり仕事の能力の低い男性はモテない。一方、女性は成長する中で、結婚したい男性が何らかの意味で「できる男」であるとの考えを身に付けてしまっている。できる女性、つまりキャリアウーマンは未婚のままか、あるいは結婚した人はいろいろな意味で自分より「できる男」を相手に選んでいる。

女性は仕事の能力のない男性であっても、やさしいとか家事をやってくれるという理由で男性を選んだり、好きになったりはしない。未婚化、晩婚化の調査研究をしてきて、男女のその非対称性が大いなるネックだと考えてきた。

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