米中を悩ませる元CIA職員の香港逃亡問題

火中の栗を拾うのは誰か

この連載コラムでは、中国のみならず、台湾、香港、東南アジアを含む「グレーターチャイナ」(大中華圏)をテーマとする。私は20代から40代前半の現在まで、留学生や特派員として、香港、中国、シンガポール、台湾に長期滞在するチャンスに恵まれた。そうした経験の中で培った土地勘を生かし、「大中華圏」 での見聞を硬軟取り混ぜて皆さんにお伝えしていきたい。
(写真:Getty Images)

なぜ彼は香港に逃亡したのか

米国の情報機関、国家安全保障局(NSA)による極秘のネット情報の収集を暴露した米国人のエドワード・スノーデンという男は、よほど国際情勢に対して敏感な嗅覚の持ち主だったのではないか。そう思えるほど、香港を逃亡先に選んだセンスは秀逸だった。

ノースカロライナ州生まれの30歳元CIA職員で最近まで、NSAに出入りしていた技術者のスノーデンは、米国政府の広範囲かつ違法な情報収集に怒りを覚え、内部告発を決意し、今年1月から米国内でメディア関係者と接触を開始した。そして6月上旬にワシントンポストがスノーデンの持っていた内部情報を報じた。

報道が出る前の5月下旬、スノーデンは、ダンサーの恋人と暮らしていたハワイを離れて香港に入り、老舗ホテル「ミラマ-」に泊まって英紙ガーディアンの取材を受けた後、ミラマ-をチェックアウトしてから姿を消している。だが、その後も香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストの取材を受けている。どこか身分証も必要がない香港の安宿に潜んでいるのか、あるいは誰かが隠れ家を提供しているはずである。

突発的な事件が、世界の真の姿を思わぬ形であぶり出してくれることがある。香港への逃亡が成功したことで、スノーデンの身柄問題が早期に解決する可能性はほぼゼロに近くなった。なぜなら香港におけるスノーデンの処理は、「香港世論」「中港関係」「米中関係」という3つのレベルで、やっかいな問題を突きつけることになったからだ。

問題は複雑であるほど処理には時間がかかる。主権や外交が絡めばなおさらだ。時間がかかるほど、米国の傷口は大きくなり、国内世論や国際世論の圧力が高まっていく。ハッキングで情報を盗まれた米国内の企業や世界各国の不満も次々と出てくるだろう。

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