日本銀行・黒田総裁へ、7つの緊急提言 日銀「異次元緩和」の弱点をFedウォッチャーが分析

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提言3:「量的・質的金融緩和」は長期インフレ期待をターゲットにせよ

消費者物価指数(除く生鮮食料品)で2%という「物価安定の目標」の達成については、企業や家計が厳しい調整を迫られないような緩やかなペースで達成すればよい。「量的・質的金融緩和」は、実際のインフレ率ではなく、長期インフレ期待をターゲットにすれば十分である。

言うまでもないが、標準的な経済理論に従えば、経済活動に影響を及ぼすのは実質金利である。実質金利は、名目金利とインフレ期待の差によって決まる。名目金利がゼロ近傍で抑えられている場合、金融緩和を行うにはインフレ期待を高めるしかない。これが白川前体制から日銀が直面してきた問題だった。実際のインフレ率によって実質金利が決まるのではない。

提言4:「量的・質的金融緩和」がもたらす緩和効果のメカニズムを整理せよ

非伝統的金融政策が必要なのは名目金利がゼロ近傍に抑えられているためである。もし名目金利に下げ余地があるのであれば、そもそも非伝統的金融政策によってインフレ期待に働きかける必要がない。言い換えると、インフレ期待に働きかける非伝統的金融政策が効果を持つのは「名目金利が動かない」という前提の下であり、名目金利の上昇を放置すれば実質金利の低下にはつながらない。

黒田総裁は5月の会見で、長期金利の上昇には「景気回復や物価上昇期待の要素」と「巨額の資産買入れによるプレミアムの圧縮」という相反する要素があると説明している。だが、金融緩和による物価上昇期待が長期金利を上昇させてしまうと言ってしまっては、元も子もない。

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