日本銀行・黒田総裁へ、7つの緊急提言 日銀「異次元緩和」の弱点をFedウォッチャーが分析

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いまのFRBは、大規模な量的緩和を続けつつも、金利コントロールという手段を捨てていない。経済的条件に基づく時間軸によって長期のゼロ金利政策を約束し、それがイールドカーブの左半分(期間の短い方)をしっかりと止めている。その上で、量的緩和がプレミアムの圧縮という経路でイールドカーブの右半分を抑制、ブルフラット化を促す狙いだ。さらに景気回復が勢いづき、一定の条件が整えば、金利政策は再び重要なツールになるという見通しも示している。

「金利が上がるとも言えないし、上がらないとも言えない」(黒田総裁、5月22日)と言っている場合ではない。名目金利にはしっかりとしたアンカー、すなわち金利コントロールが必要だ。そのアンカーがなければ、インフレ期待を高める意味がない。無担保コールレート翌日物の再誘導目標化や、かつて戦時金融を賄うためにFRBが実施したターム物のコントロール(金利キャップ)を、必要に応じて、導入すべきである。

提言6:インフレ率の短期的な上振れを許容せよ

消費者物価指数(除く生鮮食料品)で2%という「物価安定の目標」について、黒田総裁は「ある時は2%を超えることもあるでしょうし、2%を下回ることもあるかもしれません」と述べ、一定の幅をもってみていく姿勢を示している。果たして、インフレ率が2%を下回っている場合であっても「物価安定の目標」を達成している状況と判断してよいのか。

長年のデフレから抜け出なければならない課題を抱えた現時点において、2%を下回るインフレ率は決して「物価安定の目標」と整合的ではない。インフレ率がデフレ側から2%に近づく過程で緩和解除の思惑が台頭し、インフレ率の2%達成すら難しくするおそれがあるからだ。日本経済にはインフレ率が2%の目標を突き抜けるくらいの勢いが必要だ、という説明こそが求められよう。

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