学資保険で子供の教育費を貯めてはいけない 「教育費」に苦しまないためにはどうする?

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学資保険の返戻率は、保険料の払込を「全期前納払い」(※)にすることで、アップさせることができます。しかし最もよいものでも、120%台です。保険機能のある学資保険では、その保険のコストがかかる分、おカネの増え方は抑えられてしまうのです。

(※)全期前納払い:「一時払い」は、全保険期間分の保険料を1回で支払う方法ですが、「全期前納払い」は、全保険期間分の保険料を、保険会社に預けることになります。年1回、あるいは、毎月の支払期日に、預けたおカネから保険料が支払われます。保険事故発生した時や、解約すると、未経過分の保険料は返還されます。「一時払い」は、返還されません。

教育費をつくるために学資保険に入る意味はない

もし「預貯金よりは利回りがよいから」と考えるなら、「学費の一部を賄うつもり」で持てばよいでしょう。しかし、保険機能にありがたみを感じて入る必要はありません。子供のいる多くのご家庭では、万一のために生命保険に入っているでしょうし、わざわざ、「教育費をつくるために」と学資保険に入る意味はないのです。保険と貯蓄は別々に考えるべきです。

さらに、流動性の低さも問題になります。仮に市中金利が上昇し、もっと利回りのよい金融商品が販売されたとしても、あなたの今持っている学資保険の利回りが上がることはありません。「もっといい商品に乗り換えよう」と、途中で解約すれば、解約返戻金として戻ってくるのは、払い込んだ保険料をずいぶん下回る額でしょう。「学資保険」に閉じ込められたおカネは、時流に乗れないまま、大きくなれずに満期を迎えます。

一方、保険会社にとっても、利幅の少ない学資保険を懸命に売る必要性は、おそらくはないでしょう。さらに、国債利回りの低下によって運用が難しくなり、個人年金保険や学資保険など貯蓄性商品は保険会社にとってもしんどい商品のはずです。

それでも学資保険の販売をやめない、やめたくない理由のひとつには、学資保険は、保険会社にとってドアノック商品であるということです。「学資保険」をきっかけに、「長いお付き合いをしたい」という気持が込められているのです。

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教育費が不足している現実は、奨学金やローンの借入率が上がっていることで明らかです。

日本学生支援機構の学生(大学・大学院・高等専門学校、専修学校専門課程)に対する奨学金の貸与割合は、平成16年が22.8%(4.4人に1人)だったのに対し、平成26年度は、約1.7倍の38.4%、実に2.6人に1人になっています。

文部科学省の調査によると、東京都の授業料は、1977(昭和52)年から右肩上がりを続けています。2004(平成16)年以降、国公立大学は横ばいになりましたが、私立大学ではなおも上がり続けています(国公立私立大学の授業料等の推移:文部科学省より)。一方、平均給与は、1997(平成9)年から年々減少をしています(民間給与実体統計調査結果:国税庁より)。

こうした環境の中で、いかにおカネを貯めていくかは大きな課題です。しかし、貯めていかなければなりません。次回は、子育て世代が貯蓄をするための方法と、もっとも合理的な保険の持ち方についてお伝えしたいと思います。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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