狙うはシニア!秘境ツアーで囲い込め ANAが「宣伝なし」の異例なマーケティング

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キヤノンや野村証券など異業種を巻き込む

異業種とも積極的に手を組んだ。キヤノンマーケティングジャパンとは、同社が写真セミナーで集客した顧客を対象に、ワンダーアースを売り込む。セミナーではプロカメラマンの講師が風景写真のアングルなどを細かく指導。キヤノン製カメラだけでなく、秘境の撮影など写真に興味あるユーザーに対し、今度はANA側が販促する。

ワンダーアースの顧客層の特徴は、メインが60代前半ということ。ここ数年、定年退職した大量の団塊世代たちだ。男女比は若干女性が多く、地域的には全国から集まっているという。

つまり、ANAセールスが狙うのは、時間にも金銭的にも余裕のあるシニアだ。ただし、旅馴れて目が肥えた50~60歳代を振り向かせるのは、簡単ではない。行き先の奇抜さに加え、ありとあらゆる絡め手も駆使。キヤノンとは「カメラ」「撮影」という面で、手を握り、顧客を自らのフィールドへ引き寄せる。ANAはキヤノンのほかにも、野村証券など異業種との提携を進めている。

「うちは代理店として、国内向けは6位だが、海外向けは弱い。JTBなどと比べても、まだまだ取扱額は低い。だからこそ、尖ったものを打ち出さなければ……」。そう語るANAセールスの危機感は強い。

日本政府観光局によると、12年の日本人の海外出国者数は、前年比9%増の推定1850万人で、過去最高だった。目先は円安で逆風だが、長期的に海外旅行が伸びていくのは間違いない。果たして“尖った”ANAグループの取り組みが、どこまで成功するか。ワンダーアースの成否は、エアラインだけでなく、旅行・観光業界全体にとっても、1つの大きな試金石になる。

詳しくは『週刊東洋経済』5月25日号の「沸騰!エアライン&ホテル」を、ぜひご覧下さい。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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