「過労死白書」から見える、長時間労働の実態 「残業代も出ない!」NPOには相談が続々

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長時間労働が業界の体質になっているところも多く、抜本的な対策を取ることは簡単ではなさそうだ(写真:foly/PIXTA)

10月7日、「平成28年版過労死等防止対策白書」が閣議決定された。これは、2014年に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、厚生労働省が毎年まとめることにしたものだ。ついに、長時間労働・過労死問題の実態が、可視化されることになった。日本において、週49時間以上の労働をしている労働者の割合は、男女合わせて21.3%。韓国の32.4%には及ばないが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどの先進国の中で比較すると、ワーストとなっている。

労働問題を扱うNPO法人POSEE(ポッセ)代表の今野晴貴氏は、「白書を読むかぎり、まだまだ過労死・自殺の労災申請件数も、認定件数数も、全体としてあまりに少ない。世の中には訴え出ることもできないまま『もみ消されている』膨大な過労自殺事件が隠れているはずだ」と指摘する。

POSEEには、長時間労働に関する相談が、途切れることなく寄せられているという。その中には、労災認定の目安となる、1カ月の残業時間が80時間を超えるものも多い。具体例としては、次のようなものだ。

教育もなく、納期は厳しい

男性/20代前半 デザイン会社
・10:00~19:30が定時だが、毎日23:00近くまで働いており、休憩時間も実質20分しか取れていない。
・体力に限界が来ていると本人も自覚しており、時折、訳もなく涙が出るなどの症状あり。
・長時間労働の背景には、ろくに教育をされずに顧客の納期の厳守が要請されていることがある。
・会社は「裁量労働制」と説明し、残業代は払われていない。

女性/20代後半 イベント会社

・店舗の営業時間は11:00~20:00。
・22:00までは残業代が出るが、業務量が多くて終わらないため、朝の7:00に出勤してサービス残業をしている。休日出勤も多い。
・辞めたいと言っているが、お客さんに迷惑がかかると思い、辞められないでいる。
・辛い時期に会社を辞めると自信がなくなり、転職がうまくいかなくなるため、辛い状況を乗り越えたうえで辞めた方がいいと思っている。
・求人には、基本給と残業代は別個に書かれていたが、残業代が何時間分の労働にあたるか、それを超えた場合に支払うかの記載がない。

男性/30代半ば  IT企業のSE

・残業時間が100時間を超えており、チーム管理などを任され、疲労が出ている。体の痛みを感じる。
・家に帰るのが0:00。人の管理もしているため、よりきついと感じている。
・社内で教育をしない。教えないのに、難しい仕事を若い人にやらせている体制。
・会社では、メンタルケアが一切されていない。
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