まさかのトランプ大統領誕生を想定してみる 「マーフィーの法則」は知っていますよね?

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トランプ氏自身はかねてから、自分が大統領になったらCEOとして振る舞い、日常の業務はCOOとなるマイク・ペンス副大統領に任せる、と言っている。真面目な話、ペンス知事は下院議員として6期12年を務めたベテランであるから、議会対策は「丸投げ」した方が良いかもしれない。

10月4日に行われた副大統領候補同士の討論会でも、上滑り気味だった民主党のティム・ケイン上院議員に対し、ペンス氏の冷静な言い回しが光った。ブッシュ(子)政権におけるディック・チェイニー副大統領のように、強い存在感を発揮するかもしれない。

一方、経済政策においては、トランプ候補は大規模減税やインフラ投資策を打ち出している。とはいえ、これも立法化するのは議会の仕事である。三権分立による相互チェックシステムが働くので、新大統領といえども何でも決められるものではない。

むしろ、外交政策の方が問題だ。反自由貿易を標榜する大統領が誕生すると、TPP(環太平洋戦略的経済協定)の批准はたぶん絶望ということになるだろう。ところが日本政府は、今月中にもTPP関連法案の衆院通過を目指す構えである。何だかちぐはぐな動きに見えるかもしれないが、ベトナムやマレーシアなど他の交渉参加国の内情を考えれば、「日本が率先して批准する」ことの意義は小さくないものと考える。

トランプ氏はNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しもすると言っている。メキシコとカナダは戦々恐々といったところだろう。9月26日の第1回討論会で、トランプ候補が「負け」の評価を受けたときには、メキシコ・ペソが買われるという現象が見られた。トランプ候補当選となれば、逆にメキシコ・ペソとカナダドルの下落を見込んでおくべきだろう。

もっと悩ましいのが日米同盟だ。「タフ・ネゴシエイター」を自認するトランプ氏は、同盟国への負担増を要求すると言っている。「日本にある米軍基地は、コストの半分を日本側が負担している」という説明に対し、トランプ氏は「なぜ100%でないのだ」と問い返した。

トランプ大統領でも政治は変わらず、最後は……

とはいえ、日本が100%の駐留経費を負担するようになると、天下の米軍さまが日本の傭兵になってしまう。また日米同盟の最前線では、「日本の支援抜きでは、今のような米軍のグローバル展開は不可能」というのが常識である。新大統領の方針がどうなるかといえば、ジミー・カーター政権(1977-80)のときの在韓米軍撤退論議と同様、最後は尻すぼみになるのではないかと思えてならない。

ということで筆者の見立てでは、トランプ政権が発足しても思ったほどにはアメリカ政治は変わらない。そこで次にどうなるかというと、本人がブチ切れて大統領職に興味を失うか、あるいは身内の共和党本流派が造反して大統領弾劾に動く、なんて筋書きが浮かんでくる。その場合、「次はマイク・ペンス政権へ」なんてことになるのかもしれない。

おみくじで言えば、「末吉」くらいであろうか。

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