東芝、「名脇役」の鉄道部隊が挑む海外戦略 資金難にあえぐ中で選んだ方法とは?

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地域の絞り込みだけではない。製造から販売まで、すべてを自社で行うことにこだわらず、現地企業とも手を組み、投資額を最小限に抑えている。さらに、車両メーカーに電機品を納めると価格競争に陥りやすいため、鉄道の運行会社に直接売り込みをかけていくような直接営業も行っている。

東芝が強みを持つのはモーター。消費電力を大幅に削減するシステムなどを提供している

「われわれは新参者」と築紫部長が言うように、国内のライバルたちはすでに海外で足場を固めている。日立製作所は2015年にイタリアの鉄道会社2社を買収し、英国に鉄道車両工場も保有している。

三菱電機も欧州やインドで拡大路線を順調に歩んでいる。派手に事業を進めるライバルたちをよそに、東芝の鉄道部門は身の丈に合った戦略で事業拡大を目指すのだ。

メモリなど主力事業を支える存在

こうした“投資ミニマム”戦略は徐々に成果を出し初めている。インドの工場は2017年4月に製造を開始する予定で、機関車や地下鉄などの受注を見込んでいる。欧州でも、2015年11月にドイツ国鉄の貨物部門向けに機関車の電機品の更新案件を受注している。この受注をきっかけに、欧州はエンジニアリング拠点を置く計画だ。

現在、鉄道事業の海外売上高比率は4割程度。「国内も成長させつつ、海外比率は5年以内に5割まで引き上げる」(築紫部長)方針だ。

東芝は9月28日、今期に入って2度目となる業績予想の上方修正を発表した。メモリの好調が理由だ。ただ、メモリ事業に積極的に投資を行えるのも、鉄道事業など、安定的に稼ぐ「脇役」が支えているからなのだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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