経産省エース官僚、再生エネルギーを語る 再エネ普及を阻む「送電線」問題

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――地域的には北海道が多い。

土地代が安いから。ただ調整力の限界が来たら、それ以上受け入れられなくなる。太陽光や風力発電は分単位の出力の変動が大きいため、それを買い取る電力会社サイドでは出力の変動を調整する火力や水力発電が必要。北海道は、その相殺キャパシティが相対的に少ない。そのために火力の設備を増設したり、蓄電池に投資したりするとなると、電気料金に跳ね返る。それだったら、若干土地代が上がるかもしれないが、全国どこでも事業できるぐらいに買い取り価格の設定をしているのだから、もっと地域分散してもらったほうがいい。

再エネ問題の本質は「送電線」の問題

――電力会社側の接続拒否は今後増えるのか。

現時点でゼロ回答の接続拒否は珍しいが、電力会社のバンク(配電用変電所の変圧器)の容量がいっぱいで、(接続希望量どおりの)満額回答は難しいと言われたという相談がすでに100件以上に上っている。条件のいい配電用の電線に、接続希望が集中しているという事情もある。

とりわけ北海道での大型の太陽光については、接続に限界が来るのが早いかもしれない。昨年12月の時点で、われわれはすでにウォーニング(警告)を発している。その時点で北海道についてはかなりいっぱいになってきたので、受け入れ容量の精査と対策を考えるように当時の枝野経済産業大臣から電力会社と事務方に指示が出ていた。今後、近いうちにバンク対策(逆潮流〈需要家側から電力会社側へ余剰電力を逆流させること〉を認める規制緩和)を出す方向で検討している。

再エネの問題の本質は、送電線にある。世界のどこの国もみな送電線の問題に苦しんでいる。広域連系(電力系統相互の間で送電線や周波数変換設備などによって接続すること)の中で再エネを合理的に受け入れるための送電線の設計をどうするか。カギはそこにある。

――FITに乗じて不正業者が跋扈するのではとの懸念もある。

消費者トラブルについては、何万件という取引がある中で1~2%の範囲内で相談がコンスタントに来ている。ただ、FIT導入によって悪徳商法が増えているというデータはない。トラブルといっても、あくまで相談であって、「こんなチラシを信じていいのか」というレベルのものが多い。

最近、PV(太陽光発電)施工士という全国共通の資格を民間主導でつくってもらい、初回だけで約2000人が試験を受けた。こうした質の高い施工士の育成は今後も後押しをしていく。業界も太陽熱パネルの失敗を見ているので、そこは一所懸命やっている。

 (撮影:尾形文繁、今井康一)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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