経産省エース官僚、再生エネルギーを語る 再エネ普及を阻む「送電線」問題

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――日本の場合、FITの買い取り価格は運転開始時ではなく、設備認定時で決まる。買い取り価格の権利を先に取得し、部材の調達コストが下がるのを待って、運転開始することが可能となるため、優遇しすぎだとの批判もある。

現行の規定では、設備認定時の計画よりも出力が20%以上変更になる場合には、申請の出し直しをしてもらうことになっている。将来的には、使用するパネルの型式の変更が著しい場合は、申請の出し直しをしてもらうことも考えている。

買い取り価格が決まる時点については制度前にも大きな議論になったが、運転開始時では事業者がファイナンスを組めないという事情がある。FITは「ファイナンス支援法」ともいえ、ファイナンスの実需とピッタリ合わせている。ただ、買い取り価格のカラ枠取りにならないように、きっちり精査していく必要がある。ルール抜けしようとする業者が出てくれば、次のルールを考えて対応していく。

――買い取り価格の水準に関しては、再エネ推進派の中でも「ドイツなど海外と比べて2~3倍で高すぎる」との批判もある。

マーケットの実態がそうだから、そうしているだけのことだ。普及させたいから値段を上げるとか、普及にブレーキをかけたいから値段を下げるとかというのは法律の権限上、認められていない。法律には、通常効率的に事業を実施した場合に要する費用を基に価格を算定せよと書いてあり、足元の実績を見て決めることになっている。

もっとも、効率的な水準については価格算定委員会でも議論になったところで、特に太陽光では費用の分布(の広がり)が著しい。結果的に小規模な事業者に配慮しつつ国民負担も考えて、平均的な水準に合わせることとなった。

確かに、日本の費用水準は海外と比べて高い。太陽光でいうと、パネルも高いが、むしろ内外価格差が大きいのはパワーコンディショナーなどの補機類(周辺機器)だ。また、日本の場合、設置方法が海外に比べて厳しく、設置コストもかさむ。パネルは、同じ中国製でも欧米で買うより日本で買ったほうが高い。ただ、日本でも価格はこの1年で1割は確実に落ちている。

それから法律には、最初の3年間は集中導入期間として、「特に利潤に配慮せよ」と書いてある。われわれとしては、それを順守するしかない。ドイツの場合は、コスト割れした価格設定もできるようになっているが、日本とは制度設計の思想が違う。

再エネの賦課金はいくらぐらいが適正か

――現状、FITによる買い取り費用が電気料金に上乗せされる賦課金はまだ毎月100円程度であり、毎月1500円以上に達しているドイツと比べると、国民の負担感は小さい。ただ、将来的にはドイツと同様に賦課金が高騰することを懸念する声もある。

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