南鳥島レアアース開発は30年かけても難しい 「夢の海底資源」報道に覚える違和感

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尖閣諸島の事件で、市況は15倍超に

中国のレアアース資源の供給不安と環境問題の危険性を先取りする形で、オーストラリア、カナダ、東南アジア、ロシアから中央アジア、南アメリカ、北アメリカ、カナダとすべての資源の可能性をチェックして回った。調査の結果、われわれの結論として、最も可能性のあると目される鉱山はオーストラリアのマウントウェルド鉱山であった。

それ以外のレアアース資源は、開発コストが過大であり、経済合理性がないとの結論を出した。同時にいずれ中国がレアアース資源を外交カードに使い資源制約が起こることも予見したが、レアアース市場の市場規模があまりに小さいことを考えると、技術革新が進み用途開発が飛躍的に進まない限り、大したことにはならないと読んでいた。その後、レアアース市場の成長と「産業のビタミン的な要素」との綱引きが継続したが、事実2010年9月までは、大きな資源制約は起こらなかった。

2010年の9月の尖閣諸島事件から発展した中国レアアース輸出の禁止がレアアース市況を15倍以上にまで暴騰させた経験は、これまで何度も同様の投機の実態を見てきた筆者にとっても信じられないものだった。2年間というもの、市場を混乱させた結果、2013年に入って市場は、上昇前水準まで戻り落ち着きをとり戻したように見えるが、まだ高騰時の副作用も残っており、傷が完全に癒えたわけではない。

中国の供給不安におびえて買い込んだ在庫整理が必要であるため、筆者の見立てでは全治2年間の病状だ。完全な健康体に戻るには2015年までかかるだろう。レアアース騒ぎの顚末は結局、誰にも利益をもたらしたものでなかったといえよう。

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