米当局が利上げにこだわる「重大な理由」 「イエレン講演」で見えた秋以降のシナリオ
夏枯れで材料に欠いた相場関係者は、異常なまでに8月26日のジャクソンホールでのイエレン議長の講演に期待していた。
だがそもそも「ジャクソンホール」は、FEDが与えられた法的権限の中で、新しいフレームワーク(政策決定の枠組み)を世界に向けて示す場である。対象は市場関係者ではなくアカデミア。新しいフレームワークのアイデイアが無ければFRB議長は参加しない。
ならば、バイナリー(二者択一)のイベントに慣れてしまった今の「オン・オフ二進法相場」には、本来馴染まないイベントだったかもしれない。26日の米国市場も、結局のところ異常な期待があだとなり、いったんイエレンで「オン」(上昇)。ところが、直後にフィッシャーFRB副議長がCNBCでイエレンのスピーチの解釈を説明すると、簡単にオフ(下落)してしまった。
いつから市場は「中央銀行主義」へ傾斜したのか
筆者の経験では、1970年代後半から存在するこのイベントが常時注目されるようになったのは、2000年代になってから。そのきっかけは1999年、当時議長だったグリーンスパンが、後に ”グリーンスパン・プット”とよばれるようになった “New Challenges for Monetary Policy” を発表してからだろう。これを境に、株価の急落局面では、FEDはインフレや失業率に関係なく、金利を引き下げて株価を支えることが”普通”になった。
ここから金融市場は中央銀行主義へ傾斜。DO NOT FIGHT FED(中央銀行に逆らうな)という「格言」が、あちこちから聞こえるようになったが、さらに踏み込んだのが2010年だ。この年にバーナンキが発表したのが“The Economic Outlook and Monetary Policy”だ。ここでは日銀がひっそりとやっていたQE(量的緩和政策)を、なんと2008年のリーマンショックから2年が過ぎ、システム危機が去った後の米国でも始めることが示唆された(QE2)。
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