「悪質ドーピング」、その手口と対抗策とは? 日本唯一の検査機関が東京五輪に向けて提言
成長ホルモンから血液ドーピングまで
――そもそも禁止物質とは、どれくらいあるのですか。
数百種類あります。筋肉増強作用があるタンパク同化剤は、ドーピング検査で検出されないよう、少しだけ分子構造を変えたものもあります。新しい物質は検査体制が整っていないと思われて使用されやすいのです。
――検査をすり抜ける可能性があるということですか。
可能性としてはあります。ただ、大規模な大会では、検体を10年間保管します。当初は検知できなくても、後でわかることもあります。長期保管はドーピングを抑制する効果があるでしょう。
世界では年間約27万の検体を検査しています。すべてのアスリートを完全にカバーしているというわけではありませんが、やみくもに検査回数を増やせば、今度はコストや効率性に問題が生じてきます。2014年は世界で1693件が違反と認められました(オリンピック競技以外も含む)。
検知しにくいのが成長ホルモンです。タンパク同化剤に比べ、運動能力を向上させる効果は低めですが、代謝が早いのです。ただ、2012年ころから、ドーピングを比較的長期間追跡できる技術が確立されました。
ほかにも血液ドーピングと呼ばれるものがあります。持久力を高めるために、競技直前、輸血によって赤血球を増量するなどの行為です。具体的には、いったん血を抜いておいて、また体内に戻す自己輸血といった手法があります。見つけるには、大会前後だけではなく、頻繁にその選手の血液の状態を調べておいて、異常な変化がないか見極めることになります。そのためには過去のデータベースを構築しておくことが重要です。
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