MBAエリートたちが、"失敗"を急ぐ理由 仏INSEADには、良質な"失敗"が用意されている

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冒頭、INSEADでの学習の核となるグループワークについて説明したのは、ピーター・ゼムスキー教授だった。

「君たちのグループは、失敗するように構成されている。失敗から立ち直る秘訣は、早く失敗して、早く修復することだ」

INSEADでは入学後、最初の4カ月、ほぼすべての課題を5〜6人から成るグループ単位で提出する。授業によっては、試験さえもグループで受けて、評価されるのが特徴的だ。グループメンバーは、国籍や職歴などが重ならないように学校側が割り当てる。

チームは、失敗することを”前提”として構成される(写真左から2人目が吉田さん)

「INSEADでは、もちろん、ファイナンスやマーケティングなど、ビジネススクールの基礎的な学問を学んでいますが、それ以上に、チームワークやコミュニケーションスキルについて学ぶことが多いです」

君たちのグループは失敗するように構成されている、という言葉を身にしみて感じたのは、入学してまもなく、課題をやるために、チームで集まったときのことだ。

吉田さんのチームは、インド人男性(31)、フランス人男性(29)、アメリカ人女性(27)、レバノン人男性(26)、オーストラリア人男性(26)という構成だった。

「9時の集合で、レバノン人がやってきたのは9時30分。最初からもめましたね(笑)。特に私は、オーストラリア人のウォーレンとよく議論で衝突しました」

聞けば、ウォーレンさんは、INSEAD入学前は、中国のNPOで人材育成のコンサルティングに携わっていたという。自己紹介で「自分は人に興味がある」と言うほど、心理学やチーム理論にも一家言を持っていた。

「ウォーレンとは違って、投資銀行出身の私はチームに対して「効率」を求めてしまいがちで、グループワークについても気づかないうちに、冷めた態度をとることが多かったと思います。その態度のまま、ウォーレンの提示する方針に異論を唱えていたので、衝突してしまったのだと思いますね」

そんな2人の仲立ちをしてくれたのが、最年長のインド人男性だ。

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