「4種類の集中」を知る人はガス欠にならない 目標設定は人間の脳を刺激する有効な方法だ

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それは、どこまでも鍛錬を積むという意味ではなく、適度な練習や鍛錬を積んだうえで、あとは意識をほかの何かへ移し、「忘れる」ことで肉体の肝心な部分が肝心の動きをしてくれる状態のこと。まるで一種の催眠状態のような話だが、この手法を取り入れたからこそ、ミケルソンはストロークのメカニカルな動きを意識することなくパットできるようになり、それがパットとゲーム全体の改善につながった。

メンタル面の達成度を知るスコアカード

プレショット・ピラミッドのブロックをどのぐらい上手に積み上げることができているか。その指標となるのがメンタルスコアカード(右)だ。通常のスコアカードは各ホールの打数を記入するが、ここでは打数とは無関係に、各ショットに対する自分のメンタル面の状態を自己採点して記入する。

1つのショットに臨む際、プレショット・ピラミッドの「計算する」「クリエイトする」「実行する」の3ステップをきちんと順序立てて行なえたと感じたら1ポイント(1ポイント/1打)。ひとつでもステップを欠いてしまったと感じたら獲得ポイントは0(0ポイント/1打)。ラウンド終了後、このメンタルスコアのポイント合計が75で、実際のスコアが90だったら、「75/90=83%」がメンタル面の達成度ということになる。

統計的に見ると、このメンタル面の達成度はPGAツアーのトップ100に入るプレーヤーは安定して90%以上を記録し、下部ツアー選手の大半は85%、カレッジプレーヤーは80%台の前半、シングル級のアマチュアは60%台。ラードン博士が長年かけて何千人ものゴルファーを調査した結果、このメンタル・スコアを向上させることで実際のスコアを向上させる最短の近道であることがわかったそうだ。プレショット・ピラミッドを構築し、メンタル・スコアを向上させることに継続的に取り組んでいく。

「それは技術的になにかを変えることなくスコアを向上させることにつながるはずです」

ラードン博士のこの言葉を信じる価値は絶対にある。私はそう信じている。

舩越 園子 在米ゴルフジャーナリスト

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ふなこし そのこ / Sonoko Funakoshi

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。93年渡米。在米ゴルフジャーナリストとして新聞、雑誌、ウエブサイト等への執筆に加え、講演やテレビ、ラジオにも活動の範囲を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。アトランタ、フロリダ、ニューヨークを経て、現在はロサンゼルス在住。
 

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