ヘリコプターマネーは「禁じ手」とは言えない

今や無視できないベネフィットと実現可能性

安倍政権は追加財政対策を発表したが、ヘリマネ議論は現実にはならなかった(撮影:今井康一)

日本政府の追加財政政策の発動が迫った7月中旬に、いわゆるヘリマネ(ヘリコプターマネー)が金融市場やメディアで話題になった。すでにこの政策については、年初から世界の金融市場ではホットなテーマになっていたが、日本のメディアでは少し遅れて、7月中旬ころから俄然注目が高まった。ただ、ヘリマネというフレーズが刺激的なためか、この政策に対して批判傾向の見解を筆者は多くみかけた。

中には、ヘリマネ=禁じ手という「思い込み」に基づく批判論が多く散見された。「戦前の高橋是清大臣による日本銀行の国債引き受けが、その後のハイパーインフレ(預金封鎖)を招いた」との通説が広がっている。その連想からヘリマネという言葉を、危険な政策と思い込んでいる方がいまだに多いと推察される。

先進国当局者の間では有力な選択肢

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ただ、現在先進国の当局者の間で、ヘリマネは有力な選択肢として検討されており、そして投資家の間ではこの政策採用を仮定して投資戦略が議論されているのが現実である。

どのような経済政策にもベネフィットとコストがあるが、リーマンショック後の各国の経済状況を踏まえれば、ヘリマネのベネフィットが勝り、かつ実現可能との認識が広がっていると筆者は考えている。先述のような思い込みに基づいて、ヘリマネをやみくもに否定するのは建設的ではないだろう。

日本では、デフレが1990年台半ばから20年も続くという、戦後他国が経験していない異常な経済状況にあった。これはデフレに対して日銀や当局が十分に対応できなかったから(だから約20年間もデフレが続いた)と筆者は考えている。なぜこうした対応が続いたのかについて、今後検証されると期待しているが、経済問題を解決する手段を突き詰めるリアリズムが欠けていたことが一因ではないか。同様に、ヘリマネというフレーズを前に思考停止に陥ることも、リアリズムを欠いた態度であるように思える。

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