2007年の春から夏に掛け、日本で大きな話題になった「セカンドライフ」を覚えているだろうか。セカンドライフは米国リンデンラボ社が2003年に開始したインターネット上に構築した3D仮想空間。ユーザーは、アメリカンコミック風のアバターとなって空を飛んだり、街を歩いたりして仮想空間を移動、その景色を楽しむ。
ものづくりが好きなユーザーは、用意されたツールを利用して住宅、家具、洋服などを自分でデザインできる。世界中の人とのチャットを楽しむことだって簡単だ。仮想通貨のリンデンドルを媒介にした商取引にも注目が集まった。まるで映画『マトリックス』のような、近未来のコンセプトがそこにあった。「ゲーム性の薄い汎用のMMOG(多人数参加ゲーム)」といえば、わかりやすいかもしれない。
祭の後は漆黒の闇夜
一般のユーザーだけでなく、サントリー、ソフトバンク、東芝、富士通など広告宣伝を目的とした大企業も続々とセカンドライフに参入。電通が大量の島(SIM)を購入したことも話題になった。コアなファンの営みと参入企業の営みが交じり合い、濃密なコミュニケーション空間が育っていこうとしていた。
当時、新聞やウェブメディアは企業がセカンドライフに参入するたびに報じていたものだ。『週刊東洋経済』もセカンドライフを題材にした特集をつくり、安普請ながらも、セカンドライフ内に支社も構築した。セカンドライフの使い方について解説した書籍も数多く出版された。
しかし、残念ながら、セカンドライフが大きなブームになることはなかった。2007年の夏休み頃が人気のピークで、その後、アクティブユーザーは徐々に減少。2008年に入ってからしばらくすると、SIMを分譲している”不動産会社”が撤退したり、プロモーションのために参入していた企業が姿を消したり、と不景気な話が相次いだ。過熱する前からセカンドライフの住人だった熱心なユーザーは継続的に利用していたものの、お祭気分が過ぎ去った後は、漆黒の闇夜のようになっていった。
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