過去、孫正義はもっと過激だった ブレない男の名言録

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11月19日発売の週刊東洋経済の巻頭特集はソフトバンクの世界作戦。久しぶりのソフトバンクに関する巻頭特集だ。調べてみると、2006年にボーダフォン日本法人を買収した際につくった『ソフトバンク奇襲の成算』が最後だった。

今回の特集のために孫正義社長が本誌の取材に応じたのは11月7日のこと。2010年11月以来、2年ぶりだ。変化球のような質問をしても、言いよどむことなく理路整然と答える様は、1997年に最初にインタビューした時からまったく変わっていない。「何をどのように話すべきか」という引き出しが頭の中にいくつも用意されており、ストーリーは練りに練られている。

何度会っても感心するのは、相手が誰であろうとほとんど態度を変えないことだ。政治家であっても、一介の記者であっても、使い分けのようなことはしない。人の目をまっすぐに見て話を聞き、自分がしゃべるときには、相手の手元あたりを見ながら話をする様子をみるにつけ、生真面目だし、非常にフェアだと思う。

孫正義とはどのような男か

私が確信を持っていえるのは、「裏表のない、ピュアな心の持ち主」ということ。言論界には「アンチ孫」も多く、言いがかりのような批判も多いのだが、色メガネは外すべきだろう。

孫社長が言っている内容には長年にわたってブレがない。要するに、昔から「世界一」「世界制覇」を目指しているのだ。ただ物言いは今のほうが静かで、おとなしい。10年前のほうがはるかに攻撃的で、数倍面白い。

そこで、今回のインタビューの発言内容を、10年以上前のインタビュー内容とオーバーラップさせてみよう。これぞ温故知新。昔の発言を知っていれば、実は「スプリント買収」は、あまりサプライズではないのである。 

なお、10年前の発言内容(太字)は2000年発刊の拙著『孫正義の将来』から引用している。

■ その1 「追い貸しはしない」

今回のインタビューで孫社長は「スプリントに対して絶対に追い貸しはしない」と発言している。これは今回のインタビューで初めて明かしたことのひとつだ。

が、これは過去の発言を紐解けば、想定内の回答だ。1999年1月7日に、「もしグループ会社が新事業をやるためにニューマネーが欲しいといったら出すか」という質問に対し、次のように答えている。

「その会社の価値が増えると思ったら、こちら側から出資、増資していきます。でも相手が欲しいと言ってきても入れたりはしません。相手が欲しいか欲しくないかは僕にはまったく関係ない。こちらが新たにカネを入れることによって、入れたものが3倍、5倍に増えるのか、あるいは増えないのか、興味はそれだけです」

■ その2 「アメリカへ行く」

米国の通信会社を買収したことをサプライズに感じた読者も多いだろう。が、もともと孫社長はバリバリのアメリカ志向だ。同じ99年のインタビューで「(インターネット事業で海外展開する場合には)アメリカではなくアジアに行ってもいいのでは?」と振ってみたが、この当時はアジアにはほとんど興味がなかった。

「アメリカが(インターネットの)一番のメッカだから、そこでガーッとやりぬく。そうすると、世界に、天下に号令をかけられるわけです。局地戦でなんぼ田舎の総大将になっても、天下の中心をとられたらオセロのように一発でひっくり返っていくわけですよ。ローカルのサクセスはロングタームのサクセスになかなかなりえない。本丸を押さえなきゃいかん」

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