一流の人材を雇うために必要なこと
ムーギー:多くの学生が安定志向に走り、かつて存在した安定雇用の幻想に回帰する中、一部の勝ち組学生だけが引く手あまたのオファーの中から、マズローの欲求で言う上のレベルの自己実現をより強く追求するようになっています。
以下では、いわゆるいい大学の中でも先頭を走っている一部の学生のことを指して議論している点をご留意願いたいのですが、そういう上昇志向の強い学生を採用しようと思ったら、やっぱりエキサイティングな仕事を会社のほうが用意して、それを適切に伝えることができないと、いわゆるトップティアの学生は多くが外資系のコンサルティングや投資銀行とかを目指してしまいますよね。
たとえば初任給800万~1000万円からスタートして、ニューヨークで1~2ヵ月トレーニングさせてもらって、2~3年後にはニューヨークかロンドンで1年働かせてもらい、グローバルエリートたちとネットワークを作って、世界規模のM&Aを担当させてもらって、馬鹿な上司や同僚に足を引っ張られなくて、といったキャリアを彼ら・彼女らは求めている。
そうした企業と比較されているという自覚を日本企業も持たないといけない。ビジネスモデルが違うので待遇面では見劣りしても、「うちの会社に入ったら、こういうキャリアアップができて、面白い経験ができて、自分のマーケットバリューが上がって、貢献が正当に評価されて」というふうに、魅力をうまく発信できないとダメですよ。そもそもそういう魅力あるキャリアパスを用意するのが先決ですが。
城:でも、日本企業にはキャリアパスがないんですよね。魅力的な仕事も、魅力的な報酬制度も用意できていない。だから、これはなかなか認めない人が多いんだけど、有名大学の理系の修士学生は、もう日系メーカーを避け始めていますよ。
日本を代表する大手メーカー、たとえば、パナソニック、ソニー、日立、トヨタなどが、理工系の大学院の修士、博士に求人を出すわけですけど、メーカーの理系採用担当に話を聞くと、そうして雇える学生の質がすごく下がっているというんですよね。戦後何十年もやってきたこのやり方が、もはやうまくいっていない。
僕は独立してから、以前から知り合いだった某国立大工学部の先生に教えてもらったんだけど「ごめん、実はいい学生なんて推薦してなかった。実は最近は、学生が自由公募で好きなところ受けまくって、どこも決まらなかった子が電機の求人使ってたんだ。今だから言うけど」って言われて結構衝撃でした。
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