稼げないあなたに、会社はもう投資しない 城繁幸氏と考える「日本に依存しないキャリア」(下)

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ムーギー:ああそうなんですか。確かに大学の教授の推薦、真に受けている企業はもはやない気がしますね。東大理系の博士とか、医学部の博士だった人が、私のところに就職相談に来たりしますよ。非常に優秀なポテンシャルを秘めた人が多くて、相談されるこちらが恐縮することもあるくらいなのですが、(伝統的日本企業が)せっかくの才能をフルに発揮させる環境や制度を用意できず、他の業界や企業にとられているという感じがします。

企業側も変わろうとはしているんだけど、官僚的組織の大きさと“ことなかれリーダーシップ”でとにもかくにも変革が遅い。研究室の先輩がたどった道を歩むことに迷いを感じている理系の学生が増えているのは間違いないですね。

城繁幸(じょう・しげゆき)
人事コンサルタント
1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通に入社。人事部門にて新人事制度導入直後からその運営に携わり、同社退職後に執筆活動を始める。雇用問題 のスペシャリストとして、人事制度、採用などの各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各メディアで発信中。最新著書に『若者を殺すのは誰か?

:そうでしょう。結構東工大とかも来ない?

ムーギー:多いです。日本のメーカーが海外での競争でも負け始めて、給料水準も下がれば、安定雇用でもなくなってきた。加えて今までは、会社のカネで好きな研究バンバンやらせてくれたのに、研究開発費がどんどんカットされてしまう。これでは、自己実現の面でも、金銭面での面でも、割に合わないなということになりますよね。日本のメーカーに入るのが勝ち組だった時代も“古き良き時代”になりつつありますしね。

:大学の研究室によっては、もう成績の低い人しか、メーカーへの求人に応募しないわけですよ。だから理系人材にとっても、キャリアパスの再整備というのは、喫緊の課題だと思います。「年俸1000万円にはどうしたら何年目で到達できるか、入社すればどういうキャリアを身に付けられるか」を明示するのは、グローバルエリートを採用するうえで最低限行うべき礼節といってもいいでしょう。

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