ジョブズ亡き後に来る、カリスマは誰だ? シリコンバレーが待望する、新たな熱狂

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月曜日は経営問題、火曜日はエンジニアリングや製品開発、といった具合だ。土曜日はオフで、日曜日は戦略や新しい社員の面接に使う。そんなリズムを持つことで、社内にも抑揚を生み出しているのだ。

また、社内では2人以上のミーティングのメモは、社内全体で共有するといったようなルールを作っている。立ったままハイテーブルで行う打ち合わせや、オープンスペースでミーティングをすることを勧め、ドーシー自らいろいろな社員と話をする。そうして、計画的にではなくて、偶然のところから何かが起こるのを、ドーシーは大切にしているのだという。

考えごとは、動きながら。毎日ランニングを欠かさず、また週末には東海岸へ飛ぶこともよくある。社内で動き回るのも、考えるためのひとつの方策だ。

ただごとではない、デザイン哲学

デザインに対する関心も、ただごとではない。どれだけ細部にこだわることが大切なのかを知っているのも、彼だ。「神は細部に宿る」というのはデザイン界では有名な教えだが、ドーシーは大きなビジョンを持ちつつ、細部の手を抜かないことを強調してやまない。

1.5センチ角ほどのスクウェアの小さなカードリーダーが、多くの人々に愛用されているのも、細部にこだわった形の愛らしさが、そこにちゃんとあるからだろう。もちろん、画面のわかりやすさ、使いやすさは言うまでもない。

ツイッターの創業からまもない頃は、「人生の教訓」をブログ上に貼り出していたという。

「イヤな奴になるな」「相手がやってくれることを当然と受け取るな」「その時を楽しめ」「いつも正直に」「偉ぶるな」「相手の夢を尊重しろ」といったような内容だ。ドーシーの人柄が、否応にもこのリストからにじみ出てくる。

ドーシーは昨年、若いエンジニアたちが集まるテクノロジー関連の会議で、こんなことを言った。「社会に変革を起こせ、ムーブメントを起こせ」。テクノロジーが社会を変える。ジャック・ドーシーは、紛れもなくその旗手なのだ。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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