VTHDがフォードのアフター業務を行うワケ 日本撤退で注目されていた6万台のケア

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フォード車6万台のアフターサービスをする会社が決まった。写真・左はエクスプローラー、右はマスタング

「収益性を改善する合理的な道筋がなく、投資に見合うリターンが見込めない」ことを理由に2016年中に日本事業から撤退すると決めたフォード・モーター・カンパニー。フォード車の販売台数は1996年には日本で2万台を超していたが、2008年以降は毎年5000台を割るほどに低迷していた。フォードのグローバル販売台数のうち、日本が占める割合は1%にも満たない。こうなれば日本市場を見限るのは、メーカーからすれば当然の判断かもしれない。

正規輸入業者として機能していたフォードの日本法人が閉鎖されると、困るのは既存のフォード車ユーザーだ。そこで、フォード日本法人に代わって、交換部品の提供やアフターメンテナンス業務を引き受ける企業が現れるのかどうかが注視されていた。

赤字子会社の新規事業が育つまでの時間稼ぎ

6月、引き受け先がVTホールディングスの100%子会社であるピーシーアイに決定した。VTホールディングスは、日産系ディーラー5社とホンダカーズ東海を柱に売上高1464億円(16年3月期)を稼ぐ独立系販売会社だ。ここ数年は国内外のディーラーに積極的にM&Aを実施し、レンタカー事業などの新規事業にも注力している。

フォードを引き受ける子会社のピーシーアイはVTホールディングスの売上高のうちたったの0.1%とごくわずか。前期には4400万円の純損失を計上しており、経営規模が小さい上に赤字体質から抜け出せない状態が続いていた。

業績が芳しくない子会社にフォードを引き受けさせるのは、フォードのアフター事業を新規ビジネスが育つまでの時間稼ぎに使おうと考えているからだ。国内自動車市場は「420万台から430万台で頭打ち」(VTホールディングスの高橋一穂社長)と見ており、縮小する国内自動車市場で生き残るためには、小規模の子会社でも新しい事業を育てようと考えているのだ。

フォード撤退の報道が出て、ピーシーアイ以外にも数社がアフターサービスの引き受け手として立候補した。その中からピーシーアイが選ばれたのは、過去に同様のケースを扱ってきた実績が買われたからだ。

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