トヨタ「エスティマ」全面改良を急がない理由 発売10年の3代目は熟成でその地位を守る
トヨタ自動車の大型ミニバン「エスティマ」。「天才タマゴ」のキャッチコピーで1990年から続くミニバンカテゴリーのスペシャリティカーだ。その初代から数えて3代目となる現行モデルがマイナーチェンジ(一部改良)を6月に実施した。
今回の一部改良では内外装のデザインを一新するとともに、安全装備を充実、サスペンションのチューニングによる走りの質感向上などを施した。
現行3代目は異例のロングセラーモデルに
これだけなら、ことさらに取り上げるような話題ではないだろうが、注目は現行エスティマが2006年1月の登場から10年半を経過したタイミングでのマイナーチェンジだということだ。初代は9年(1990~1999年)、続く2代目は5年(2000~2005年)というサイクルで次期型に切り替わったが、3代目は異例のロングセラーモデルとなっている。
昔は4年と言われた国産車のモデルチェンジサイクルは、今では平均すると5〜6年程度に伸びている。それでも10年以上もフルモデルチェンジ(全面改良)なしで売り続けるのは異例だ。数年ごとの全面改良で商品の鮮度を保ち、市場での存在感を維持し続けるというのが、量産車では常識となっているからである。
エスティマを生産中止とせずに作り続ける理由はどこにあるのか。フルモデルチェンジは考えなかったのか。今月初め、そのエスティマの報道関係者向け試乗会に足を運ぶと、会場で関係者のひとりが疑問に答えてくれた。1990年に発売した初代から一貫してエスティマに関わる製品企画担当の堀淳一氏だ。
「たしかに登場当初の頃に比べると、販売台数は落ち着いています。でも月間販売台数で4ケタは行っています。さらにはエスティマというブランドが根付いていて、箱型のミニバンは嫌という方に選んでいただけています。こうした状況から、改良を実施して販売続行という判断が下りました」
たしかに昔はライバルが複数存在したが、箱型ではない3ナンバーミニバンは、いまやエスティマの独壇場に近い。丸みを帯びたワンモーションフォルムは、唯一無二の存在といっていい。それがユーザーから根強い支持を受けているなら、全面変更せず、個性を維持する方向での改良は納得できる。
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