都知事選、告示直前「宇都宮不出馬」の衝撃波 鳥越俊太郎氏が「絶対有利」になった

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繰り返しになるが、保守系が2候補に分裂している以上は、絶対的に有利なのは鳥越氏である。気になる点があるとすれば鳥越氏の選定経緯にあったゴタゴタだ。

民進党東京都連は11日夕方、元経済産業省官僚の古賀茂明氏に出馬要請をしていた。ところがその夜、鳥越氏の決意を知った岡田克也民進党代表は鳥越氏に出馬を打診し、了解を得た。つまり都知事選候補選定の主導権は、一晩にして都連から党本部に移ってしまった。

これに都連が不満を抱かないはずはない。「非常に不本意。古賀さんを担いだのは、我々都連の国会議員。鳥越さんからの支援要請を受けるのは党本部という形になっており都連は関係ない」。東京都選出のある衆院議員は、7月12日に周囲にこんな不満を語っている。

しかし、こうしたわだかまり、ゴタゴタが尾を引くわけもなく、本命は鳥越氏ということになる。

「都連から苛められる悲劇の女性」

一方、保守陣営の票割れは深刻だ。組織的な支持という点は、増田氏が完全に押さえている。自民党都連は11日、増田氏の推薦を決定している。続いて公明党も12日の常任役員会で増田氏推薦を決定。野党統一候補が鳥越氏に絞られたことで、野党に負けたくない公明党が選挙協力をより積極的に行う可能性が高くなっている。

自民党と公明党の組織的な協力を得ている増田氏と異なり、組織のサポートのない小池氏はポスター貼りの実働部隊の調達も難しいと見られていた。だが都議会ではかがやけTOKYOが支援にまわり、その他、野党関係者からも選挙協力の申し込みがあるという。

自民党東京都連が12日に石原伸晃会長と内田茂幹事長、野沢太三党紀委員長の連名で「都知事選挙における党紀の保持について」を配布。これには増田氏以外の候補応援の禁止と、非推薦の候補を応援した場合は除名等処分の対象になることが明記されていた。“非推薦候補”が小池氏を指すことは明らかで、これがかえって小池氏を「都連から苛められる悲劇の女性」と印象付けた。

自民党を締め出されたことにより、小池氏への支持は保守系、革新系の双方から集まる可能性がある。こうした点を踏まえると文字通り、三つ巴の戦いといえる。14日から始まる17日間の選挙戦は熱を帯びることになりそうだ。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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