追加料金4万円請求!「民泊トラブル」の実態 京都が「シェアリング」に翻弄されている

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行政にも、様々な民泊にまつわる苦情が寄せられている。中でも、タクシードライバーからのものが多いという。駅で乗せた観光客を目的地で降ろしてみると、同じようなマンションが立ち並んでいて宿泊先の場所が特定できない。客に頼まれて運営者の電話番号にかけてみたら、つながった先はなんと東京だった。「運営者は投資をしているだけで、東京に在住。京都にある現地物件を見たこともなかったようだ。こういったケースでは、所有者のはずなのに、『詳しい場所は自分も分からない』と言われてしまう」(京都市役所)。

遠隔で民泊の運営をしていても、京都市内にいる業者に丸ごと委託した場合は、現地に担当者がいるから問題はない。しかし、例えば部屋の掃除だけを委託するなど、コストカットのために一部だけ業者に任せている運営者も存在するようだ。貸し手であるホストが、貸し出している物件の場所をどこにあるのか把握していないというのだから、かなりいい加減といえる。

タクシーの運転手も、外国人観光客と一緒に、宿泊先の場所探しをさせられていて、業務に支障が出ているというケースもあるという。

「民泊」なのに賃貸借契約?

また、混乱を利用した詐欺のような案件も起きている。

東京都内の女性が、民泊のサイトを使って部屋を予約した。そして、いざ京都に来てみると、驚くようなことを業者に言われてしまう。「京都市の方針で、民泊は禁止されている。別途、賃貸借契約を結ばないと違法になってしまうので、追加で4万円が必要になる」というのだ。

観光シーズンということもあり、他の宿泊施設はどこも満室で、部屋は確保できない。そこで、通常の民泊の料金とは別に、泣く泣く賃貸借契約書にサインをして、不当に高い追加料金を払った挙句、結局一泊で帰ることになってしまった。

ウェブサービスの知識に乏しい一般の観光客は、「『Airbnb(エアー・ビーアンド・ビー)』のような民泊プラットフォームサイトと、『じゃらん』などのホテル宿泊予約サイトの区別も明確についてない」(京都市役所)というのが実態だ。旅館業における宿泊と、賃貸借における契約の違いを理解することは、望むべくもない。

東京都内では昨年夏頃から、湾岸のタワーマンションでの民泊が問題視されていたが、京都では、その流れが少し遅れてやってくる。京都の観光シーズン最盛期は、紅葉が色づく秋。民泊で利益を上げようとする人は、夏頃から準備を始めていることが多いようである。

京都市は、現行の法令に基づいて、旅館業法上の営業許可が取得できない物件に対しては営業を中止するよう強力に指導し、これに従わない場合は厳正に対処していく方針だという。しかし、民泊はそもそもどの場所で行われているのか、外部からは可視化が難しいという課題もある。どこまで機能するか未知数な中で、行政の奮闘は今後も続きそうだ。

次回は、「違法民泊」撲滅を目指す、京都市の取り組みをリポートする。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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