非正規、フリーターも「退職金」がもらえる!? 確定拠出年金で「節税」しながら老後に備える

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このように退職金の本質を考えてみると、もらった給料の中から会社が積み立ててくれるか、それとも自分で積み立てるかの違いこそあれ、原資は同じところから出ているものだということがわかります。

“本来支払うべき給料の一部を別にとっておいて、退職してから支給する”のが退職金だとすれば、それは正社員に対して“会社が本人に代わって積み立ててくれる”という便宜をはかってくれる特典だったということなのです。ところが時代が変わったことによって、旧来の制度から社員が自分自身で管理していく制度に変わりつつあります。確定拠出年金はまさにその象徴です。

非正規社員、フリーターでも使える!

そう考えると金額の大小はあるものの、正社員であれ非正規社員であれ、方法によっては退職金を自分でつくることは可能です。正社員であれば「企業型確定拠出年金」に加入することになりますが、非正規社員やフリーターのような働き方の場合は、この制度に入ることができません(一部できる場合もあります)。ただし、こうした人たちは「企業型」には入れないものの、「個人型確定拠出年金」に入ることはできます。むしろ積み立てできる金額の上限は、個人型のほうが大きいのです。

具体的な金額で言えば、企業型の場合、上限は最大でも月額5万5000円、中にはその半分の金額しか積み立てられないところもあります。これに対して個人型の場合、無職や自営業者の場合ですと月額6万8000円まで積み立てることができます。非正規社員やフリーターなどの場合、多くは企業型に入れない立場、すなわち「1号被保険者」と言われる人たちだからです。

もちろん生活が不安定な非正規雇用で、月額6万8000円を積み立てるなどということは大変なことであり、決して現実的とは言えません。ただ、この金額はあくまでも上限であり、個人型の場合は5000円以上1000円単位で、自分で自由に金額を決めることができるのです。

働いている状況によって毎年の収入が大きく上下することもあり得ますから、その年によって金額を増減することもできますし、収入の厳しい状況が続くときは積み立てを休止することだってできます。さらに積み立てたおカネは全額所得控除されるため、年収によって違いはあるものの、少なくとも毎年数万円の税金は戻ってきます。これも大きな特典のひとつです。

非正規雇用やフリーターという不安定な働き方だからこそ、収入を得たときに老後のための“自分退職金”を作っておくことは重要です。そのための特典がさまざまに用意されているのが「個人型確定拠出年金」ですから、これを利用しない手はありません。どんな立場の人でも「退職金」というのは“ご褒美”ではなく、自分の働いたおカネのなかから生まれてくるものだということをしっかりと認識しておきたいものです。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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