自国防衛費を「ケチる」欧州諸国は卑怯だ NATOで応分負担しているのは5カ国のみ

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NATOはワルシャワでの首脳会議に先立ち、過去10年以上で最大の軍事演習「アナコンダ16」をポーランドで実施した(写真: ロイター/Kacper Pempel)

テロ対策から移民政策、医療政策に至るまで、オバマ米大統領と、共和党指名の大統領候補となるのが確実なドナルド・トランプの主張は、ことごとく食い違っている。

オバマはトランプが主張する移民政策を「危険」で「対話を閉ざす、だらしない」アイデアだと批判。一方でトランプはオバマを、「酷い仕事」をやってきた「うんざりするような大統領」と評している。

たか、軽蔑し合う関係を超えて、両者の意見はある1点だけについては一致している。あまりに多くの北大西洋条約機構(NATO)加盟国が、自国防衛に必要十分な貢献をせず米軍に「タダ乗り」しているとの見方だ。

バルト3国は「口だけ達者」だ

NATOが米国の国益にどの程度寄与しているのか疑問視することには、まっとうな理由が存在する。

東西は海に面し、南北に安定した隣国を持つ米国には、直接的な脅威は存在しない。核武装したロシアは確かに米国を何度も破壊可能かもしれないが、一方で米国もロシアに同じことをできる。ロシアのプーチン大統領は不愉快な性格の持ち主だが、国家を巻き込んだ自殺を望む性格ではない。

米国は財政面でも割りを食っている。NATOは各加盟国に、少なくとも国内総生産 (GDP) の2%を防衛費に回すよう推奨しているが、2015年の統計によると、この目標を達成したのは米国、英国、ポーランド、エストニア、ギリシャの5カ国だけだ。

以上の2点は「タダ乗り」ぶりをよく示している。バルト3国はロシアの侵攻を恐れ、NATOの「集団的自衛権」原則に基づく義務を負う準備をするよう、米国に求めている。しかし、辛辣な反プーチン発言によって評論家に「鉄の女」と評されるグリバウスカイテ大統領が率いるリトアニアはGDPの1.14%しか防衛費につぎ込んでいない。同大統領はバルト3国のマーガレット・サッチャーどころか、吠えるネズミに過ぎないのだ。

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