民進玉木氏「アベノミクスへの対案」を語ろう 「こども国債」発行で国民の未来に投資を

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有馬:優秀な営業マンも、地道な営業もまだまだ足りませんね。

玉木:民進党がこれからやるべきことはシンプルなんです。国民の不安に向き合うことです。個人消費が伸びないのは将来が不安だからです。ではその根源はどこにあるのか。私は①老後の不安解消②「産み育てる、働く」をサポートする、の二つに集約されると思います。

玉木私案「こども国債」の発行も視野に

玉木氏が提唱する「20年償還のこども国債」の中身とは?

特に②については、私なりの構想があります。まず、現在の厚生労働省、文部科学省などを再編し、「人生の前半」(子育て、教育、転職なども含めた仕事関連)の政策を担う役所と「人生の後半」(年金、医療、介護)を担う役所に整理します。

そのうえで「人生の前半」部分に関する福祉政策の財源については、「こども国債」の発行でまかなってはどうかと考えています。具体的に言えば、財政法の公債発行対象経費の定義を見直して教育・子育て政策のために使う人材育成目的国債を発行するのです。つまり「建設国債」の「ひと」バージョンです。

建設国債は将来インフラが資産として残るから、という理由で、法律上認められた国の借金ですが、今の時代、借金してでも次世代に残す資産は、人材しかありません。

それに「こども国債」の発行による財源で子育て・教育の施策が充実でき、子ども数が増えれば、20年も経つと彼らは立派な「納税者」になります。ですから、例えば20年償還の「こども国債」を発行すれば、財政健全化にも矛盾しないのです。

家庭政策にかける予算は、スウェーデンはGDPの4%程度。OECDの平均が2~3%なのに対して、日本はたった1%程度しかありません。せめてOECD並みに予算を倍増すべきなのです。一方、人生の後半に必要な予算には、税財源をしっかり充てていけばいい。今後、こうした考え方について、党内外で積極的に情報発信していきたいと思います。

旧民主党から名前が変わりましたが、生活者の立場に立って、声をあげる。富裕層を敵に回すというのではなく、誰もが人生の中で直面する不安に寄り添いながら、政策にまとめ上げていけるのは、やはり民進党しかありません。再び増税が先送りされようとしていますが、今回の参議院選では「見送り分の2%の財源である約5兆円で、私達だったらこんな改革ができる。暮らしがこうよくなる」と訴えます。そして次の衆議院選挙では一段とメニューを充実させて、政権を奪取する魅力的な施策パッケージを示したいと思います。そのために全力を尽くします。

【有馬の目】記者が選ぶ「将来を託せる政治家」で、野党の中では断然トップ。初当選時から光っていたので、以来注目してきた。先見の明、発信力はピカ一。野党の今、与党政治の追及に鋭いが、それをそのまま与党になって実現して欲しいと願うばかりだ。

(写真:尾形 文繁 構成:福井 純)

有馬 晴海 政治評論家

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ありま はるみ

1958年 長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒業。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立し、テレビ、新聞、雑誌等での政治評論を中心に講演活動を行う。政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評がある。ポスト小泉レースで用いられた造語「麻垣康三」の発案者。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方で、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰し、国民にわかりやすい政治を実践している。主な著書に「有馬理論」(双葉社)、「日本一早い平成史(1989~2009)」(共著・ゴマブックス)「永田町のNewパワーランキング100」(薫風社)、「政治家の禊(みそぎ)」(近代文芸社)など。

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