日本では乗れない!欧「格安」高速列車の凄さ パリ北~ブリュッセル間を乗車してみた

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ここで車内を回ってみた。イージーは10両編成。前後の車両は機関車で、中間の8両が客車だ。パリ寄りの3両がスタンダードXLで、次が使用していないビュッフェカー。10ユーロで乗車しているのか、4~5人の若者がテーブルを囲んで飲み物片手に談笑していた。そしてブリュッセル寄りの4両がスタンダード(2等)車両だ。

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料金15ユーロの補助いす席

スタンダードは通路を挟んで片側2席ずつとなっている。そして連結部のデッキには折りたたみ式の補助イスが3~4つ設置されている。

車内の設備・仕様はタリスとまったく変わらず、安かろう悪かろうといった印象は受けない。全体の乗車率は30%といったころだ。運行開始から間もないということもあり、まだ周知が行き届いていないようだ。

リール近郊まで北上すると、市内を迂回し中心部には入らずバイパス線を経由してLGVヨーロッパ北線に合流する。ここから先は、線路の左右には立ち入りを防止するフェンスが張られ、集落が近づくと防音壁も設置され高速専用線に乗り入れたことが分かる。

そして一気に加速し時速290~300㎞前後で走行する。短いトンネルをいくつか抜けるとやがて減速し、再び在来線に合流し、終点ブリュッセル南駅に13時44分に到着した。所要時間は2時間10分。タリスよりも45分余計にかかったが、急ぐ旅でなければ、割安で快適な旅であった。

日本はコストアップの方向へ

では、こうしたローコストトレインは日本でも登場するのだろうか。パリ~ブリュッセル間は、日本でいえば距離的には東京~名古屋間のようなものだ。立ち席とはいえ10ユーロで乗れるなら大人気間違いなしだろう。

ただ、結論から言うと、難しいのではないかと思う。日本と欧州では鉄道に関する制度や考え方の違いもあり、サービス内容の差別化によるコストダウンはなじまない。

とはいえ、設備を豪華にした列車やレストラン列車のように、付加価値をつけて料金を高くした列車が続々と登場している現状を見ていると、日本ではコストアップには抵抗がなさそうだ。だとしたら、イージーが行なった価格破壊のような大胆なチャレンジを日本の鉄道事業者も見習うべきではないだろうか。

(写真はすべて筆者撮影)

三浦 一幹 トラン・デュ・モンド代表

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みうら かずみき

1960年東京生まれ。世界の鉄道フォト・ライブラリー「トラン・デュ・モンド」代表。世界各国の鉄道取材・撮影にあたる。海外鉄道研究会、日本旅行作家協会会員。

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