鳥取の小さなIT企業に転職者が殺到するワケ 地方にあることはまったくハンディじゃない

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鳥取県にあるLASSICのオフィス

そうはいっても、チケット駆動型のニアショア開発サービスを展開する企業は少なくない。ではなぜ、LASSICの門をたたく者が後を絶たないのだろうか。LASSICはこの2年で米子、岡山、福岡、仙台、姫路の5拠点を新たに展開した。ニアショア開発は勤務地を選ばない。「地方にはITの仕事なんてない」と諦めかけているエンジニアに、地元で働く夢を与えているのがLASSICなのである。

技術革新が著しいIT業界は、世の中でもてはやされる華やかな世界だけではない。就労環境は旧態依然として厳しい企業もあり、そういったところではメンタルヘルス不調者が続出することが問題視されている。

2009年、LASSICは現在の代表取締役社長である若山幸司氏の就任で第二の創業期を迎えた。当初は、現在も主力事業となっているニアショア開発を手掛ける会社だったが、IT業界のメンタルヘルス不調者増加の解決の一助となるべく、メンタルタフネスの研修事業を立ち上げたのである。

「経営の通信簿に『×』がついた3年間だった」

鳥取県内の各地域と提携し、田舎での共同生活と農業を通じてメンタルを鍛える研修で、一時的ではあるものの、農業・ボランティアの担い手が増えることで地域貢献にも役立つ事業だ。

研修を通じてメンタルタフネスが向上するという投資対効果の高さから、大手企業を中心に契約が増えたが、その後すぐに停滞の時期を迎えることになる。その理由は会社が地方にあったからではない。世の中にあまたある研修の中で、メンタルヘルス不調者に対する研修を、あえて選択する企業が少なかったからである。

結果として3年後の2012年9月に、LASSICはメンタルタフネス事業への新規投資を縮小した。若山氏の言葉を借りると「経営の通信簿に『×』がついた3年間だった」のだ。それ以降、もともと手がけていたニアショア開発事業に再度注力することとなる。

ニアショア開発事業に振り切った後のLASSICは急成長を遂げる。2014年8月に米子オフィスを開設してからわずか1年で5拠点を開設し、2015年10月の時点では7拠点を構える規模となった。採用数もここ2年で60人にのぼり、「50の地域に、1000人の仲間を」という言葉を中期経営計画として打ち出した。

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